パリエット| 病院でもらった薬の値段Part2


パリエット
(ラベプラゾールナトリウム)
パリエット(エーザイ、主成分ラベプラゾールナトリウム、薬価 10mg錠 = 143円)は、胃潰瘍を治療するための薬です。胃潰瘍とは、何らかの原因によって、胃の粘膜が障害を受け、胃液のなかの胃酸によって、胃の細胞が傷つく病気です。パリエットは、胃から分泌される胃酸の量を減らすことで、胃の細胞を保護し胃潰瘍の治療を促進します。

パリエットは、胃潰瘍のほかにも逆流性食道炎という病気の治療にも使われます。逆流性食道炎とは、胃液が胃から食道に漏れ出すことで、食道の細胞が胃酸にさらされ傷つくことで起こる病気で、食道がんの原因と考えられています。パリエットは、胃酸を減らす作用があるので、この逆流性食道炎についても治療効果を示します。

パリエットの作用メカニズムに関わるタンパク質は、プロトンポンプと呼ばれています。プロトンとは、水素イオン、酸性の元になるイオンのことです。胃液中の水素イオンの濃度が高ければ高いほど、胃液の酸性度は高くなります(pHが低くなる)。プロトンポンプは、胃の壁にある壁細胞にあり、壁細胞から水素イオンをポンプのように胃の中へくみ出し、胃液を酸性にする働きをしています。

パリエットは、このプロトンポンプに強く結合して、プロトンポンプを止めてしまいます。パリエットのように、プロトンポンプを止める薬のことを、プロトンポンプ阻害剤と呼んでいます。パリエットを飲むとプロトンポンプからの水素イオンのくみ出しがとまり、胃液中の水素イオンの濃度が下がり、胃酸分泌が減少します。そのため、胃酸による胃の障害が起こらなくなるというわけです。

パリエットは、非常に強い胃酸分泌抑制作用を示すのですが、これはパリエットとプロトンポンプへの結合の仕方に原因があります。

パリエットには、構造式のなかに硫黄原子(S)があります。パリエットは、胃の中で構造が変化して、この硫黄原子がプロトンポンプを構成するアミノ酸の硫黄原子と直接結合できるようになります。この結合は、共有結合(ジスルフィド結合)という強い結合で、一度結合するとなかなか切れることはありません。例えて言うと、パリエットとプロトンポンプが堅く握手をするような感じです。

普通の薬では、薬とタンパク質が結合するといっても、直接手を握り合って結合するのではありません。薬とタンパク質は、お互いを引き合う力でただ触れ合っているだけ、という感じです。ぱっと見たときには、薬とタンパク質が結合しているように見えますが、実際はくっつたりはなれたりしているのです。

パリエットのようなジスルフィド結合を作る薬は、タンパク質にくっついたらなかなか離れません。そのため、普通の薬より強く、長い間タンパク質の働きを止めることができます。といってもパリエットは、永久にプロトンポンプと結合するわけではありません。生体内のグルタチオンという物質によって、ジスルフィド結合は壊れるので、パリエットは、プロトンポンプから離れることができます。つまり、パリエットは、適度に強く、長い間、作用できるというわけです。

さて、プロトンポンプ阻害剤には、胃潰瘍の治療のほかに、もうひとつの使い方があります。パリエットなど、日本で発売されているプロトンポンプ阻害剤は、胃潰瘍や胃がんの原因のひとつと考えられている、ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)の除菌に使われています。といってもパリエット自体に強い抗菌作用があるわけではありません。ピロリ菌をやっつけるには抗生物質を使うのですが、この抗生物質は、胃の中で胃酸により分解されてしまいます。そこで、抗生物質と一緒にパリエットを飲むのです。パリエットによって胃酸をへらすことによって、抗生物質の胃酸による分解を防ぐことができるのです。プロトンポンプ阻害剤の薬理作用をうまく使った方法だと思います。考えたヒト、えらいなぁ。


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パリエット(ラベプラゾールナトリウム)の構造式

パリエット(ラベプラゾールナトリウム)の構造式

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