ノイロトロピン| 病院でもらった薬の値段Part2


ノイロトロピン
(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液 )
ノイロトロピン(日本臓器製薬、主成分ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液 、薬価 4単位錠 = 32.7円)は、帯状疱疹後疼痛などの、慢性的に続く痛み(慢性痛)を治療するための薬です。ノイロトロピンは、ウサギの皮膚にワクシニアウイルスを皮膚に投与したときにできる炎症部分から抽出した物質です。痛みを感じる部分には、痛みを止める成分もあるのではないか、という考えから見つかった薬がノイロトロピンです。ノイロトロピンは様々な化合物の混合物であり、ノイロトロピンの鎮痛作用の原因である成分はいまだ特定されていません。

ノイロトロピンが用いられる帯状疱疹後疼痛は、慢性痛の中でも治療しにくい痛みとされています。帯状疱疹は、ヘルペスウイルスが神経の中に感染して、皮膚に水泡を生じ。強烈な痛みを感じる病気です。帯状疱疹自体は抗ウイルス薬で治療できるのですが、その後も痛みだけが慢性的に続くことがあります。これが帯状疱疹後疼痛です。

帯状疱疹後疼痛には、アスピリンなどの消炎鎮痛剤は効果がありません。これは、帯状疱疹後疼痛が炎症によって起こるのではないからです。現在、帯状疱疹疼痛は、ウイルスによって神経が傷つけられたことにより、痛みを伝える神経の感受性が上がって痛みを感じやすくなった状態だと考えられています。

ノイロトロピンは、痛みを伝達する神経の働きを抑制することで、帯状疱疹後疼痛の痛みを抑えるのではないかと考えられています。このような働きを持つ鎮痛薬の代表といえばモルヒネです。モルヒネは、オピオイド受容体というたんぱく質の働きを活性化することで、痛みを伝える神経の働きを低下させると考えられています。しかし、ノイロトロピンはオピオイド受容体の活性化を起こさないことが実験で示されたことから、ノイロトロピンはモルヒネとは異なる作用メカニズムで痛みを抑えると考えられています。

ノイロトロピンの鎮痛作用メカニズム解明のために、痛みに敏感になっている動物モデル(疼痛モデル)を用いて、様々な実験がおこなわれてきました。

例えば、ノイロトロピンの作用部位はどこか?という疑問を解くために、動物の脳の中に、直接ノイロトロピンを投与する実験が行われました。すると、全身へ投与した時に比べ、脳の中に投与したほうが、ノイロトロピンの鎮痛作用が強く現れました。そこで、ノイロトロピンは、脳の中の神経に働いて、痛みの伝達を止めるのではないか、と考えられました。

 脳の中には、痛みを伝達する神経の働きを抑制するための仕組みがあると考えられており、下降性抑制系と呼ばれています。下降性抑制系は、アドレナリンα2受容体やセロトニン受容体というタンパク質が活性化することで、その働きが亢進することが知られています。

 これらアドレナリンα2受容体やセロトニン受容体の働きを抑制する薬(遮断薬、拮抗薬)をノイロトロピンと同時に投与することで、ノイロトロピンの鎮痛作用は、弱くなることが示されました。この結果から、ノイロトロピンは、どうもこのアドレナリンα2受容体やセロトニン受容体の働きを高め、下降性抑制系の活動を活発にすることで、痛みを止める作用があるのではないか、と考えられるようになりました。

先にも述べたとおり、ノイロトロピンはいろんな化合物の混合物なので、ノイロトロピンの中には、アドレナリンα2受容体やセロトニン受容体を活性化することができる、いくつかの成分が存在すると考えられます。今のところ、この成分は見出されていませんが、この成分を純粋なかたちで取り出すことで、より強い鎮痛薬が開発できるかもしれません。

その一方、ノイロトロピンは、含まれているさまざまな成分のバランスが取れているために鎮痛作用が強くでる、つまり一個一個の成分の効き目は弱いけど、全部を一緒にすることで、はじめて強い鎮痛作用を示す、という可能性もあります。これは、漢方薬なんかの作用メカニズムにつながる考え方ですね。
  
 ノイロトロピンは、正体不明の不思議な薬ですが、その正体や作用メカニズムを探求することで、様々な生理学的、薬理学的な発見ができるかもしれません。薬理学をやっている人間にとっては、大変面白い薬だと思います。

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正体不明。。

ノイロトロピン(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)の構造式

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