オルベスコ(シクレソニド)とはどんな薬?

オルベスコ(帝人ファーマ、主成分シクレソニド)は、気管支喘息の治療に用いられる薬です。オルベスコは、喘息の患者さんの気管支で起こっている炎症を抑えることで、喘息の発作が起きるのを予防します。

オルベスコは吸入剤というタイプの薬で、インヘラーという道具を使い、口からオルベスコの薬液を肺に吸い込みます。インヘラーは、オルベスコの液を非常に細かい水滴(エアロゾル)に変化させるための道具です。オルベスコのエアロゾルは大きさが非常に小さく、肺の中の細い気管支まで入り込むことができます。そのため、オルベスコは強い喘息治療効果を示します。

オルベスコの主成分であるシクレソニドはステロイドと呼ばれる物質です。ステロイドは強い炎症効果を持つことが知られているのですが、シクレソニド自体には炎症を抑える効果はありません。シクレソニドが効果を示すためには、肺の中の酵素(エステラーゼ)によって、活性をもつような構造(活性体)に変化しなくてはいけないのです。オルベスコのように、そのままでは効果を示さず、体内で変化を受けることによってはじめて効果を示す薬を「プロドラッグ」とよんでいます。

さて、ステロイドは吸入すると口の中の免疫力を減少させる作用を持つため、カンジダ症などの感染症を起こすことがあります。オルベスコの場合は、この副作用を防ぐために、プロドラックの特徴を利用しています。

オルベスコを使用する場合、口から肺へと吸い込むので、口の中の粘膜にもオルベスコが張り付きます。ここで、オルベスコは肺での変化を受けない限り活性体には変化しないので、ステロイドとしての作用を示しません。そのため、オルベスコの副作用としての口の中のカンジダ症は起こりにくいと考えられます。オルベスコは、吸入されてたどり着いた気管だけでステロイドとしての効果を示すのです。

オルベスコのような吸入ステロイド剤は、現在、喘息の治療薬の第一選択とされています。そのなかでも、オルベスコは副作用が少ないほか、一日一回の服用でよいという便利な点も併せ持つ優れた薬です。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


オルベスコ(シクレソニド)の構造式