テグレトール(カルバマゼピン)とはどんな薬?

テグレトール(ノバルティス,主成分カルバマゼピン)は,てんかんの治療に用いられる薬です。テグレトールは,神経の異常な興奮を抑える作用をもつことから,てんかんだけでなく,統合失調症の興奮状態や躁病の治療にも用いられます。また,テグレトールは神経の異常な興奮によっておこる痛み(たとえば三叉神経痛)を予防するためにも用いられています。

てんかんというのは,脳の神経細胞の電気活動になんらかの異常が生じることで,体の痙攣を起こしたり,意識を失ったりする状態のことです。神経細胞の電気活動は,細胞の表面にあるイオンチャネルというタンパク質のナトリウムイオンや塩素イオンなどが出入りすることで生じます。てんかんの患者さんでは,この機構のどこかに異常が生じ,神経の活動をコントロールできなくなるのではないか,と考えられています。

テグレトールは,神経細胞のイオンチャネルの中でもナトリウムチャネルと呼ばれる種類のタンパク質の働きを弱める作用を持ちます。ナトリウムチャネルは,細胞外から細胞内にナトリウムイオンを通すためのイオンチャネルで,ナトリウムイオンが細胞内に入ると神経は興奮作用をしめします。

テグレトールは,このチャネルが開かないようにすることで,神経が興奮するのをとめ,てんかんや痛みに対して治療効果や予防効果を示すのだと考えられます。同様に,躁病や統合失調症で起こる興奮症状にも神経の興奮が関与しているのではないか,と考えられたことから,テグレトールはこれらの病気の治療にも用いられるようになりました。

テグレトールには,再生不良性貧血という重大な副作用がおこる可能性があるとされています。再生不良性貧血とは,赤血球や白血球,血小板などの血液細胞が産生されなくなる重篤な病気で,死に至ることもあります。そのため,テグレトールを長期にわたり服用する場合は,定期的な血液検査が必要とされています。テグレトールは,非常に効果がある薬だけに,使い方をきちんと守って,テグレトールがもつ性能をきちんと引き出してあげたいものです。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


テグレトール(カルバマゼピン)の構造式