プロマック(ポラプレジンク)とはどんな薬?

プロマック(ゼリア新薬、主成分ポラプレジンク)は、胃潰瘍の治療に用いられる薬です。プロマックという名前は、胃(stomach;ストマック)を守る(protect;プロテクト)することに由来しています。この名の通り、プロマックには胃潰瘍で傷ついた胃を保護する働きがあります。

プロマックの主成分であるポラプレジンクという化合物は、カルノシンという物質に亜鉛が含まれているものです(ジンク=Zinc=亜鉛)。ポラプレジンクは、胃潰瘍の部分の胃の細胞を傷つける原因であるフリーラジカルという物質の働きを止める働きがあります。また、胃へ血流量をふやして胃の細胞の修復を早めたり、胃の表面を覆うことによって、胃酸による胃潰瘍の悪化を防ぐという働きもあります。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。

さて、このプロマック、胃潰瘍の薬として紹介しましたが、全く別の病気の使われ方もしています。現段階では正式な効能とは認められていないので、健康保険は効かないのですが、世の中では結構使われているようです。

その病気とは、「味覚障害」です。味覚障害では、舌の細胞の働きが落ちて、食べ物の味が感じにくくなったり、全く別の味に感じたりします。この味覚障害にプロマックは効果があるということがわかり、現在臨床試験において、きちんとした効果を確認する作業が行われています。

このプロマックの味覚障害に対する作用は、ポラプレジンクの中に含まれる亜鉛によるものとされています。味覚障害の原因として、亜鉛不足が大きな割合をしめており、手軽に亜鉛を摂取するためにプロマックが使われているのです。

舌では、常に新しい細胞が働いています。舌の細胞はすぐ死んで、次の新しい細胞に入れ替わります。そのためには、細胞がどんどん増えなくてはいけません。細胞の増殖には、DNAの複製(合成)が必要なのですが、この作業に関わる酵素タンパク質(DNAポリメレース)の働きには亜鉛の存在が欠かせません。亜鉛がたりないと、DNAポリメレースの働きが落ち、舌の細胞の入れ替わりが起こりにくくなって、舌の働きが低下して味覚障害を起こすのです。

亜鉛のような金属が生体内で働くのは不思議な気がしますが、他にも鉄や銅なんかも生体の働きに重要な働きをもっています。また、プラチナやコバルトなんてのは薬の成分として使われています。金属が生身の体の中にある、、何か不思議な感じですね。


プロマック(ポラプレジンク)の構造式