アクトネル(リセドロン酸ナトリウム水和物) とはどんな薬?

アクトネル(エーザイ・味の素、主成分リセドロン酸ナトリウム水和物)は、骨粗鬆症の治療に用いられる薬です。

アクトネルが用いられる骨粗鬆症とは、高齢の女性の方に多く見られる病気です。骨粗鬆症では、骨の密度が低くなってスカスカになります。そのため、骨の強さは弱くなり、ちょっと転んだり、ものをぶつけただけで骨折してしまうようになります。

高齢者の場合、骨折の回復はおそく、場合によっては寝たきりの生活の原因ともなります。そのため、アクトネルのような骨粗鬆症の治療薬は、高齢者社会が進む日本では需要が大きくなっています。

アクトネルは、骨を破壊する破骨細胞と呼ばれる細胞を殺す(正確に言うと自殺させる=アポトーシスを起こす)働きを持っています。

骨の強さは、骨を作る細胞(骨芽細胞)と骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きが調和することで維持されています。骨粗鬆症では、骨芽細胞の働きが弱くなることで、相対的に破骨細胞の働きが強くなり、骨が壊されることで骨が弱くなります。アクトネルは、破骨細胞の働きを弱めることで、骨芽細胞の働きを相対的に高め、骨が弱くなるのを止めるのです。

骨粗鬆症が高齢の女性に起こりやすいのは、骨の強さが女性ホルモンによってコントロールされているからです。アクトネルのような骨粗鬆症の薬を開発するときには、この状態を動物で再現するために、卵巣を摘出したメスのネズミさんを用います。このネズミさんの骨は、ヒトの病気とおなじように密度が低くなるのですが、アクトネルは、この骨の密度の低下を止め、骨の密度を高める作用を示します。

アクトネルは、ビスフォスフォネート系化合物と呼ばれるタイプの薬です。このビスフォスフォネート系化合物は飲み薬なのですが、食道の粘膜にくっついたりすると炎症を起こしたり潰瘍を起こしたりする性質があります。そのため、アクトネルのようなビスフォスフォネート系の薬剤を飲むときには、食道に薬がくっつかないように、たっぷりの水で服用し、少なくとも30分は横にならないようにすることが必要です。

このように、ビスフォスフォネート系化合物は、ちょっと飲むのが面倒な薬ですが、最近ではアクトネルの中でも、1週間に一度の服用でOKなタイプも登場しています。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


アクトネル(リセドロン酸ナトリウム水和物)の構造式