クラバモックス(グラクソ・スミスクライン、主成分アモキシシリン水和物 ・クラブラン酸カリウム)は、主に子供の中耳炎の治療に用いられている抗生物質です。クラバモックスは、中耳炎の原因となる肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ(ブランハメラ)カタラーリスなどの細菌類に対して強い殺菌作用を示します。クラバモックスは、子供でも飲みやすいドライシロップ(水を加え甘いシロップとして飲む薬剤)になっています。クラバモックスは、飲み薬なのですが、中耳炎が起こっている耳の内部(中耳)へ分布しやすい性質を持っています。
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クラバモックス以前にも、中耳炎を治療するための抗生物質は存在していました。しかし、抗生物質につきものの耐性菌が多く登場するようになり、これらの耐性菌にも効果がある薬剤の登場が望まれていました。
クラバモックスは、耐性菌に対抗するために開発された薬です。これまで使用されていたアモキシシリンという抗生物質に、耐性の原因となるタンパク質「βラクタマーゼ」の働きを止める作用を持つクラブラン酸カリウムを加え、配合剤としたのがクラバモックスです。
βラクタマーゼというのは、多くの抗生物質に含まれているβラクタムという構造(アモキシシリンの構造式の中の正方形の部分)を分解する酵素タンパク質です。アモキシシリンに耐性をもつ細菌は、このβラクタマーゼを持っており、アモキシシリンを分解して効かなくしてしまいます。クラブラン酸カリウムにより、βラクタマーゼが働かなくなれば、アモキシシリンは細菌を攻撃することができるので、殺菌作用を取り戻す、というわけです。
2つの薬を組み合わせて1つの薬とする配合剤は、抗生物質の世界では以前からメジャーな存在でしたが、最近では高血圧の薬や糖尿病の薬でも登場するようになってきました。配合薬には、薬を飲む側にとっては、飲むのが楽になり効果も強くなるし、薬を作る側としては、古い薬であっても配合薬の形にし、新薬に生まれ変わらせることができる、というメリットがあるのです。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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