パルミコート(ブデソニド)とはどんな薬?

パルミコート(アストラゼネカ、主成分ブデソニド)は、気管支喘息の発作を抑える効果を持つ薬です。パルミコートは、吸入ステロイド剤と呼ばれるタイプの薬です。パルミコートは、強い炎症抑制作用を持つステロイド薬を器具を用いて期間の中に直接送り届けます。ステロイド剤の粉末を服用するためには「タービュヘイラー」という器具をもちい、ステロイドの液剤である吸入液(パルミコート吸入液)を服用するためにはネブライザーという器具を用います。パルミコートは、生後6ヶ月異常の乳幼児から小児、大人まで幅広い年齢層の患者さんに使用することができます(年齢ごとに服用量が異なります)。

気管支喘息では、気管で慢性的炎症がおこり、炎症に関わる免疫細胞によって様々な生体内物質(炎症性メディエーター:ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなど、神経ペプチド:サブスタンスP、ブラジキニンなど)が産生されます。これらの物質は、気管の神経や筋肉が過敏にさせ、何かの拍子に気管を急激に収縮させます。これが気管支喘息の発作です。そのため、喘息の発作を起こさないようにするためには、炎症を防ぐための薬剤、特に強い炎症抑制作用をもつステロイドがよく使用されます。

ステロイドは体内の様々な機能をコントロールするホルモン「グルココルチコイド」と同じ働きを持っています。ステロイドを飲み薬として服用すると、グルココルチコイドを分泌する「副腎」という臓器の働きが弱まるという副作用が生じます。この副作用を防ぐためには、全身にステロイドが回ってしまう飲み薬より、気管支や肺にステロイドを直接とどけ全身に回らないようにすることが必要です。パルミコートのような吸入ステロイド剤は、このような目的で用いられます。

パルミコートで用いられているタービュヘイラーは、息を吸い込むことによって薬剤を吸入する仕組みになっています。吸入器には、タービュへイラー以外にも、フロンガスなどを用いて噴出された薬を吸い込むタイプがあります。しかし、このタイプでは薬剤の吹き出しと吸い込みのタイミングを合わせるのが難しいとされています。その一方、パルミコートで用いられているタービュヘイラーは、比較的操作が簡単で、吸入器としてはコンパクトであると言われています。

パルミコートのようなステロイド薬は、炎症を抑える作用がメインであることから、発作が起こるのを予防するために使われます。一方、一度起こってしまった発作を止めるためには、気管の筋肉自体を緩める作用をもつテオフィリン系薬剤やβ2アゴニストと呼ばれる薬が必要とされます。β2アゴニストについては、全身への副作用を懸念し、ステロイドの様な吸入薬が用いられることがあります。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


パルミコート(ブデソニド)の構造式