ゾレア(オマリズマブ(遺伝子組換え))とはどんな薬?

ゾレア(ノバルティス、主成分オマリズマブ(遺伝子組換え))は、気管支喘息の発作を予防するために用いられる薬です。ゾレアは、これまでの喘息治療薬とは全く異なるメカニズムを持つ薬で、ゾレアはこれまでの喘息治療薬で効果を示さない患者さんに対して使われます。

ゾレアは、これまでの喘息治療薬とは異なり、注射薬として使用されます。一度皮下注射すると2週間~4週間の間は効果を示します。これまでの喘息治療薬のように、1日ごとの服用は必要ありません。

気管支喘息は、気管支で起こるアレルギー反応にともなっておこる炎症が原因とされています。この炎症によって、気管支の筋肉を収縮させる様々な生体内物質が分泌されます。その状態がひどくなって、気管支の筋肉が過度に収縮した状態が喘息の発作です。

ゾレア以前の喘息治療薬は、気管支の炎症を抑えて気管支の収縮を抑えたり(ステロイド)、気管支の筋肉を緩めて発作を抑える(β2アゴニスト、テオフィリン製剤)ものでした。

しかし、ゾレアはこれらの薬剤とは全く異なる作用メカニズムを持っています。ゾレアはアレルギーを起こす原因となるIgE(免疫グロブリンE)というタンパク質の働きを抑え、アレルギー反応を元から止めてしまうのです。

ゾレアは、抗IgE抗体というタンパク質であり、IgEに結合する性質を持っています。喘息などでのアレルギー反応がおこるには、IgEが免疫細胞および抗原(アレルギーの原因となる物質)と結合することが必要なのです。ゾレアはIgEに結合することで、IgEと免疫細胞・抗原との結合を出来なくさせることで、アレルギー反応を起こるのを防ぐ作用があるのです。

ゾレアは、喘息の治療に全く新しい手段を提供しました。ただ、問題点としては、コストが非常に高い、ということが挙げられます。ゾレアはタンパク質製剤である、というのが製造コストが高くなっている原因の1つです。タンパク質製剤の効率的な作成方法については、現在いろいろな企業で研究開発が行なわれています。今後の技術革新によるコスト面の改善を期待しましょう。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。