オイラックスクリーム(ノバルティスファーマ、主成分 クロタミトン)は、湿疹や蕁麻疹(じんましん)などで生じる皮膚のかゆみを止めるために用いられる薬です。オイラックスクリーム、と言う名前のとおり、かゆみを感じる部位に塗るためのクリームとなっています。
皮膚の病気において、かゆみというのは一番しんどい症状と思われます。かゆみというのはかゆいところをかくと止まるようにみえるのですが、かくことで皮膚の炎症を起こしている部分の皮膚をかえって傷つけ(掻爬といいます)、かゆみの原因を増やしてしまうことがあるのです。
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そのため、オイラックスクリームのようなかゆみ止めの薬が必要になります。ヒトは痒いと無意識にかいてしまうもの。かゆみを止めることが、掻爬をふぜぎ、かゆみの原因となる皮膚の炎症の治りを早くすることにつながるのです。
オイラックスクリーム自体には、炎症を止めるための成分は含まれていません。ただし、姉妹品であるオイラックスクリームHには、炎症を抑える作用を持つヒドロコルチゾン(ステロイドとよばれるタイプの抗炎症薬)が含まれています。
さて、オイラックスクリームのかゆみを止める効果は、主成分であるクロタミトンによるものとされています。しかし、クロタミトンのかゆみを止めるメカニズムというのは、実はよくわかっていません。いっぱんてきに、蕁麻疹などのかゆみに関与するとされているヒスタミンの作用について、クロタミトンは影響を及ぼさないとされています。また、かゆみ以外の皮膚感覚に対して、クロタミトンは影響を与えることもなく、局所麻酔薬のような知覚神経を麻痺させる作用をもつわけでもありません。
クロタミトンは皮膚に塗ると温感を刺激し(軽い灼熱感を感じるとのことです)、これがかゆみを相殺するのではないか、ともいわれています。ただ、実際にそのような現象を引き起こす生体内の分子機構については報告されていないため、その正当性についてはなんともいえないところです。
とはいえ、オイラックスクリームの臨床試験ではかゆみに対する高い有効性が示せれています(ただし、添付文書に示されている結果では、偽薬(プラセボ)を対象とした結果は示されていませんが)。
というわけで、オイラックスクリームは「作用はあるのだけど、なぜ聞くのはよくわからない薬」ということになりそうです。実は、こういう薬は世の中に意外にあるものです。はたして、どのような分子メカニズムがあるのか、興味深いところではあります。こういう薬のメカニズム解明から、新しい薬のヒントが生まれたりするのですから。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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