アズマネックス(モメタゾンフランカルボン酸エステル) とはどんな薬?

アズマネックス(MSD、主成分モメタゾンフランカルボン酸エステル)は、気管支喘息の治療に用いられる薬です。

アズマネックスは、ツイストヘラーという器具を用いて、口から気管支に薬剤を吸入して使用します。アズマネックスのツイストヘラーの中には、細かいドライパウダーが入っています(吸入時の粒の大きさは1,000分の2mm = 2μm)。口から吸い込んだ息と一緒に、この細かい粒が体内に入り、気管支や肺の表面に付着します。

アズマネックスの主成分であるモメタゾンフランカルボン酸エステルは、ステロイドと呼ばれるタイプの薬です。アズマネックスは、吸入して用いるので、吸入ステロイド剤と呼ばれています。

気管支喘息の状態にある気管支では、アレルギー反応(感作)や炎症反応が持続的に起こっています。このような状態が引き金になり、気管支の筋肉が収縮することで呼吸がしにくくなります。突発的に気管支の収縮が激しくなると、喘息の発作に襲われることになります。喘息の発作が起こらないようにするには、持続的に起こっているアレルギー反応や、炎症を抑制する必要があります。

ステロイドは、抗炎症および抗アレルギー作用をもっています。これらの作用は、アズマネックスが炎症やアレルギーに関わる様々な細胞群(T細胞、マクロファージ、好酸球、好塩基球、肥満細胞(マスト細胞))の働きを抑制することで生じます。

気管支喘息に対するステロイドの作用は強力です。この強力な作用が、気管支だけに及べばよいのですが、全身の他の臓器に及ぶと様々な副作用を引き起こすことが知られています。したがって、ステロイドを気管支の中にとどめ、他の臓器には届かないようにする必要があります。

アズマネックスのような吸入ステロイド剤は、まさにこの目的のために作られました。

飲み薬では、消化管から吸収された薬剤は、血液に乗って全身の臓器へと行き渡ります。しかし、薬を「飲む」のではなく「吸う」ことで、消化管にステロイドがいかないようにし、ステロイドの全身臓器への分布を少なくすることが出来ます(完全にゼロにはできません)。

ただし、口から吸い込むので、口の粘膜にステロイドの粉がつくことは避けられません。ステロイドには免疫力を下げる作用があるので(免疫細胞の働きを低下させるため)、口の中でカンジダという真菌が感染するカンジダ症など副作用が起こることはあります。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


アズマネックス(モメタゾンフランカルボン酸エステル)の構造式