エピペン(アドレナリン)とはどんな薬?

エピペン(マイランEPD、主成分アドレナリン)は、全身臓器の急激なアレルギー反応であるアナフィラキシー反応の緊急処置に用いられる薬です。アナフィラキシー反応は、重症の場合には呼吸困難や循環障害から死に至る重大な症状です。主成分のアドレナリンは、気道を広げ呼吸困難を改善し、心臓の機能を高め血管を収縮させて血圧を上昇させます。アナフィラキシー反応では緊急の処置が必要なので、エピペンは自分で注射できるキット製剤になっています。

目次

アナフィラキシー反応とはどんな症状?

アナフィラキシー反応は、死亡につながることもある非常に重篤なアレルギー反応です。アナフィラキシー反応は、ハチに刺されたり、食物アレルギーの原因となる食べ物を食べることが引き金となって起こります。

一度ハチに刺されたり食物アレルギーを経験すると、体内には蜂毒のタンパク質や食物アレルギーの原因となるタンパク質(抗原と呼びます)を監視し、次に抗原が侵入したときに防御するための仕組みが整います(感作といいます)。しかし、抗原が再び体内に入ったときに、防衛機能が非常に激しく起こって生体に害を与えることがあります。これが、アナフィラキシー反応です。

アナフィラキシー反応は全身の臓器で起こります。例えば、皮膚では蕁麻疹(じんましん)や皮膚の赤み、呼吸器では気道収縮や気道浮腫(水ぶくれ)で気道が狭くなりおこる呼吸困難、循環器では全身の血管が広がって起こる急激な血圧低下や意識消失、などの症状が起こります。これらの症状が同時に起こることをアナフィラキシーショックといいます。アナフィラキシー反応は、始まって30分程度で心臓が止まる(心停止)という報告もあり、緊急処置なしに放置すると死に至ることもある危険な状態です。

アナフィラキシー反応は、急速に進みます。そのため、アナフィラキシーの初期症状(しびれ感、違和感、くちびるの腫れ、気分不快、吐き気、嘔吐、腹痛、じんましん、咳など)が起こったら、アナフィラキシーショックに進行しないように、直ちに処置をしなくてはいけません。


エピペンとはどんな薬?

エピペンは、アナフィラキシー反応が起こったときに、全身臓器の機能低下を防ぐために用いられます。ただし、エピペンがあればそれで大丈夫というわけではありません。あくまで緊急処置での使用が目的であり、本格的な治療までのつなぎ(補助治療剤)として使用されます。アナフィラキシー反応がおこったら、エピペン投与に加え救急車を呼ぶことも必要です。

エピペンは、主成分であるアドレナリンを筋肉注射するための薬剤です。緊急時に速やかに投与できるように、注射器に薬液があらかじめ詰められたキットとして提供されています。注射器を太ももに強く押し付けると、注射器に仕込まれた針から薬液が速やかに注入されます。このキットを用いた投与を練習するために、練習用トレーナーも準備されています。

アナフィラキシー反応が起こりやすいと考えられる人(たとえば、食物アレルギーや薬剤アレルギーを持つ人、ハチの刺されたことがあるひと)には、エピペンが処方されます。常に薬剤を携帯することで、アナフィラキシー反応が起こっても緊急措置が可能です。また、保育所や学校では、本人以外に教職員の方でもエピペンの投与が可能です。


エピペンの作用メカニズム

エピペンの主成分であるアドレナリン(エピネフリンとも呼ばれます)は、副腎髄質という臓器から分泌されるホルモンで、さまざまな生理機能に関与します。アドレナリンは、本来は生体にとって危険な状況(けが、ストレス)が起こったときに、全身臓器が対応できるようスタンバイさせる役割を持っています。エピペンは、これらの作用のいくつかを利用しています。

アナフィラキシー反応の治療におけるアドレナリンの作用メカニズムは以下のとおりです。

  1. 気管支・気管での作用
  2. アドレナリンは、気管支や気管の筋肉(気管平滑筋)表面のβ2アドレナリン受容体に結合して、平滑筋細胞の収縮力を低下させます。エピペンを投与することで、気道が過剰に収縮して起こる呼吸困難を改善できます。

  3. 血管での作用
  4. アドレナリンは、皮膚の毛細血管の筋肉(血管平滑筋)表面のα1アドレナリン受容体に結合して、平滑筋細胞を収縮させます。すると、皮膚の血管が狭くなり、血液を送るために必要な圧力が高くなって血圧が上がります。

  5. 心臓への作用
  6. アドレナリンは、心臓ではβ1アドレナリン受容体に結合して心臓のポンプ機能を高めます。例えば、収縮リズムをコントロールする心房に作用すると心拍数が増加します。また、全身に血液を送り出す心室に作用すると、筋肉の収縮力が増加します。エピペンを投与すると、これらの作用が組み合わさって、全身への血液供給が増えます。

エピペンによって筋肉内に投与されたアドレナリンは、10分以内に血液を通じて全身の臓器にいきわたり、速やかに効果を示します。

参考サイト:エピペンサイト(公式)


エピペン(アドレナリン)の構造式