ケラチナミン(尿素)とはどんな薬?

ケラチナミンコーワ軟膏(興和、主成分 尿素)とは、乾燥した皮膚にぬるための軟膏です。いわゆる乾燥肌だけでなく、皮膚病で皮膚が乾燥した状態(老人性乾皮症、主婦湿疹の中でも乾燥型など)に対しても用いられます。ケラチナミンは、皮膚の角質という部分に作用します。ケラチナミンは、角質が水分を保つ働きを強めたり、肌のカサカサの原因となるタンパク質を溶かし出すことで、乾燥した皮膚の状態を改善します。

ケラチナミンが作用する「角質」とは、皮膚の最も外側を覆っている部分です。皮膚の細胞は常に増殖をし、古い細胞はどんどん皮膚の表面へと押し出されてきます。これらの細胞や、表面に出てきて死んでしまった細胞が皮膚表面を覆っているわけです。これらの細胞によってできた層が角質です。角質は、これらの細胞に多く含まれるケラチンというタンパク質によって構成されています。ケラチナミンという名前は、このケラチンに由来しています。

ケラチナミンが角質に水分を保たせるのは、ケラチナミンの成分である尿素が水とくっつきやすい性質(親水性)を持つからです。尿素は、化学構造のなかに水に結合するための場所(水素結合という結合が作れる部分)を沢山持っています。そのため、水とくっつきやすいのです。

尿素は、「尿」という漢字が含まれていることからもわかるように、おしっこの中に含まれている成分です。体の中では窒素を含む物質(アミノ酸など)は、最終的に尿素に作り変えられ、おしっこと共に体外に排出されます。おしっこと共に排泄されるということは、水に溶けやすくなければいけません。尿素が水にくっつきやすい、ということは、尿素が水に溶けやすいことも意味します。そのため、尿素は、体外への排泄という目的には非常に都合の良い物質というわけです。ケラチナミンは、水との相性が良いという尿素の性質をうまく応用しているというわけです。

ケラチナミンには、肌のカサカサの原因となるタンパク質を溶かし出す作用もあります。この作用は、尿素がタンパク質の構造を変化させる働き(変性作用)によるものです。尿素は、水と同様にタンパク質を形作るアミノ酸とも相性がよくなっています(これも水素結合が作れることが原因です)。ケラチナミンを皮膚に塗ると、水素結合を介して角質のタンパク質に尿素が結合し、タンパク質が溶け出すというわけです。

乾燥した肌では、外部の刺激から体を守る「バリア機能」が低下しています。ケラチナミンは、尿素によって肌に潤いをあたえることで、バリア機能を復活させます。もともと体から排泄される尿素が、外部から体を守る手助けをする、というのは面白いですね。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


ケラチナミン(尿素)の構造式