ネオーラル(ノバルティスファーマ、主成分 シクロスポリン)とは、免疫機能を低下させるための免疫抑制剤です。免疫機能は、生体を外敵から守るために必要な機能です。しかし、免疫機能が異常に更新したり、起こって欲しくないときに起こってしまうと、様々な傷害を体に及ぼします。そのため、重い症状の場合にはネオーラルのような免疫機能を低下させる薬が必要となります。
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ネオーラルが用いられる病気としては、臓器移植・骨髄移植の時の拒絶反応、再生不良性貧血、ネフローゼ症候群等が挙げられます。また、ネオーラルは、重い症状を示す皮膚の病気(乾癬や大人のアトピー性皮膚炎において、ステロイド剤などの薬で効果が得られない場合など)にも用いられます。ネオーラルが皮膚病の治療に用いられるときは、臓器移植時の拒絶反応などの場合に比べ、少ない投与量が使用されます。
ネオーラルの主成分であるシクロスポリンは、真菌(Tolypocladium inflatum Gams)の培養液中の中から見つかった、免疫抑制作用をもつ化合物です。シクロスポリンが動物で免疫抑制作用を示すことが発表されたのが1976年、実際に薬(サンディミュン)として日本で市販されたのは1985年です。サンディミュンは、食事によって体内吸収に影響をうけるという弱点がありました。サンディミュンの弱点を改良したシクロスポリン製剤が、ネオーラルというわけです。
ネオーラルは、免疫機能を担当するヘルパーT細胞の機能を選択的に抑制する作用を持ちます。ヘルパーT細胞は、免疫システムの中で非常に重要な役割を果たす細胞です。ヘルパーT細胞は、体外からの異物の見張り役である抗原提示細胞から「外敵が侵入した」という合図を受け取ります。するとヘルパーT細胞の機能が活性化し、拒絶反応や炎症を引き起こす原因となる「サイトカイン」という物質を大量に作り出します。ネオーラルは、ヘルパーT細胞がサイトカインを作り出す仕組みの鍵を握るタンパク質、カルシニューリンの働きを抑制します。カルシニューリンは、「NFAT」というタンパク質を変化させてサイトカイン産生のスイッチを入れる働きを持ちます。ネオーラルによってカルシニューリンが働かなくなることで、サイトカイン合成のスイッチが入らなくなるので拒絶反応や炎症が抑制される、というわけです。
ネオーラルは強力な免疫抑制作用を持ちますが、免疫抑制作用があることは外部からの感染を受けやすくなるということでもあります。臓器移植後には、ネオーラルを他の免疫抑制剤と一緒に服用する場合があります。すると、免疫抑制作用が強すぎて感染症による症状が重く現れることがあります。このような事態を防ぐため、患者さんのマスク着用や十分な手洗いが必要となります。
ネオーラルの体内への吸収は個人差があることが知られています。ネオーラルの吸収量が多すぎると腎臓や肝臓の機能低下という副作用を起こすことがあります。逆に、ネオーラルの吸収量が少なすぎると効果がでず、臓器移植の場合だと拒絶反応が生じることになります。そのため、ネオーラルの投与量をコントロールして、必要な吸収量を維持することが重要になります。そのため、臓器移植後の場合には、ネオーラル服用後の血液中のシクロスポリン量を測定することが推奨されています。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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