テラビック(田辺三菱製薬、主成分 テラプレビル)は、C型慢性肝炎の治療に用いられる薬です。C型肝炎とは、、C型肝炎ウイルス(HCV)が肝臓の細胞(肝細胞)に感染して、肝臓に障害が起こる病気です。テラビックは、肝細胞におけるHCVの増殖を抑え、ウイルスの量を低下させることで、C型肝炎の進行を抑えます。
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HCVが肝細胞に感染すると、肝臓に慢性的な炎症が起こります。長い間炎症が続くことにより、多くの肝細胞は破壊され、破壊された肝細胞は線維化細胞などの別の細胞に置き換えるので、肝臓の機能は低下させていきます。(肝硬変)。この肝硬変から肝臓がんに移行する患者さんも多いです。慢性肝炎が肝硬変や肝臓がんにまで達すると、生命に関わる病状となります。
慢性肝炎から肝硬変までには10年から30年という長い時間がかかります。そこで、その間に炎症を引き起こす原因であるHCVの量を低下させれば、病状の悪化を食い止めることが出きます。そのためHCVに対する抗ウイルス剤の開発は、長年にわたって行われてきました。
テラビックが登場するまでは、インターフェロン製剤とリバビリンという2種類の薬剤を並用した治療が行われています。しかし、これらの治療はすべてのC型慢性肝炎患者に効果があるわけではありません。これは、ウイルスの種類(ジェノタイプ)によって薬剤の効果に違いが出てくるからです。また、インターフェロン製剤には間質性肺炎、抑うつ状態により自殺企図、高熱などの多くの副作用が起こることも知られています。そのため、これらの薬剤を補完する新薬の開発が望まれてきました。そうして生まれたのがテラビックです。
テラビックは、HCVが肝細胞の中で増殖するのを止める作用を持っています。
HCVは球状の粒子のなかに遺伝情報を伝えるRNAを持っています。HCVが肝細胞に感染すると、このRNAに記録された塩基配列を元に、肝細胞の中で複数のタンパク質が合成されます。これらのタンパク質は、ウイルスの構造を作るためのタンパク質(構造タンパク質)と、ウイルス増殖を適切にすすめるためのタンパク質に分類されます。テラビックは、後者のタンパク質の一つであるHCV NS3-4A セリンプロテアーゼの働きを強く阻害します。NS3-4A セリンプロテアーゼは、HCVの増殖に関与するタンパク質が作り出される中の「プロセッシング(タンパク質を適切な大きさに切り出す)」という過程に関与します。テラビックは、プロセッシングを止めることで、HCVの増殖を止めるのです。
テラビックは、現在インターフェロン製剤とリバビリンとの併用によって使用されています。テレビックの登場により、これら2つの薬剤の作用を高めたり、薬剤の投与期間を短縮(48週間から12週間)させることが可能となりました。
C型肝炎に対する抗ウイルス薬としては、さまざまな新薬の開発が進んでいます。これらの新薬が登場した際には、インターフェロン製剤がなくても十分治療可能となるのではないかと期待されています。テラビックは、それまでのつなぎの薬剤という位置づけになるかもしれません。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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