5-FU(協和発酵キリン、主成分 フルオロウラシル)は、消化器がん(胃がん、結腸がん、直腸がん)、乳がん。子宮頸がんに対して効能が認められている抗がん剤です。5-FUという名前は、5-FUの主成分である5-Fluorouracil(5-フルオロウラシル)の下線部を略したものです。
5-FUは、抗がん剤の中でも古くから用いられており、日本では1967年から使用されてきました。最初は注射剤(点滴)用の薬として使われていましたが、消化管からの吸収量を改善させるための工夫が加えられ、現在は飲み薬(錠剤)としても使用されています。また、5-FTを軟膏剤にした5-fu軟膏は、皮膚がんに効果を示します。
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5-Fuは、がん細胞でのDNA合成を止めることで、がん細胞の増殖を止めます。がん細胞が増殖するには、遺伝情報をもつDNA合成をコピーすることが必要なのですが、5-FUはこの過程を止めるのです。5-FUは、DNAの材料である核酸(の構造の一部)に似た形をしています。そのため、5-FUがDNA合成の場に紛れ込むと、DNA合成を担当する酵素の機能が5-FUによって障害されDNA合成ができなくなります。このように、DNA合成の場に紛れ込んでDNA合成の邪魔をするタイプの抗がん剤を「代謝拮抗剤」と呼んでいます。
5-FUは、比較的安全性が高い抗がん剤とされています。しかし、5-FUはDNA合成を止める作用を持つため、この作用メカニズムが原因となる副作用は生じます。5-FUがターゲットとするDNA合成は、がん細胞だけでなく普通の細胞においても起こっています。そのため、5-FUを服用するとDNA合成が止まることによる副作用が現れます。
5-FUの副作用は、細胞増殖が多く行われている臓器(すなわち、DNA合成が活発に行われている臓器)で起こります。5-FUによる代表的な副作用としては、口の粘膜細胞に働くことによる口内炎、腸の細胞に働くことによる下痢、毛根細胞に働くことによる脱毛などが挙げられます。また、血液を作り出す骨髄細胞の働きを低下させる「骨髄抑制」が起こり、血液障害(白血球減少による抵抗力の低下、血小板現象による出血低下)があらわれることもあります。
5-FUは、他の抗がん剤と併用して使われる場合も多いです。例えば、5-FUの点滴に加え複数の種類の抗がん剤を同時に投与するという投与方法(略語で表される事が多い)が用いられます。例えば、大腸がんでは次のような投与方法が用いられます。
また、5-FUを体内で長時間作用できるように構造を改良したフトラフール(大鵬薬品、主成分テガフール)や、テガフールとテガフールの作用増強剤であるギメラシル、オテラシルカリウムを配合したTS-1(ティーエスワン、大鵬薬品)も広く使用されています。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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