シンポニー(ヤンセンファーマ、主成分 ゴリムマブ(遺伝子組換え))は、関節リウマチの治療に用いられる薬です。シンポニーは、TNFαモノクローナル抗体製剤と呼ばれるタイプの薬です。シンポニーの主成分であるゴリムマブは、遺伝子組み換え技術を用い、培養細胞によって作られるタンパク質です。このように、遺伝子組み換え生物によって作られる薬のことを生物製剤とよんでいます。現在、臨床では、多くの生物製剤が用いれられており、TNFαモノクローナル抗体製剤は、そのなかでも代表的なものです。
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関節リウマチでは、免疫機能の異常により、手足の関節に重症の関節炎が生じ、進行すると関節が破壊され動かせなくなります。関節リウマチにおける関節の痛み、関節破壊による機能障害は、患者さんの生活の質(QOL)を著しく低下させます。
十数年前までの関節リウマチ治療では、効果的な薬剤が不足していました。薬剤による治療は、痛み止めなどによる一時しのぎの治療にとどまり、関節の傷害を止めるには至りませんでした。現在では、シンポニーのようなTNFαモノクローナル抗体製剤が数種類発売され、リウマチ治療は格段の進歩を遂げました(TNFαモノクローナル抗体製剤は、強力なリウマチ治療効果を示しますが、副作用・効果な費用などを考慮し、通常の薬剤治療により症状の改善がみられない場合に使用されることになっています)。
関節リウマチの症状悪化に関与する生体内物質として、TNF(抗悪性腫瘍壊死因子)αが知られています。TNFαはマクロファージなどの免疫細胞から放出され、他の免疫細胞を刺激、炎症メディエーターと呼ばれる物質を放出させます。炎症メディエーターは、本来は外的を攻撃させる命令を免疫細胞に伝えるために使われますが、過剰に産生させると自分自身の体を攻撃するために使われてしまいます。関節リウマチにおける関節炎や関節破壊は、TNFよって引き起こされた自己への攻撃と言えます。
シンポニーは、TNFαの作用を低下させます。シンポニーは、TNFαモノクローナル抗体と呼ばれるタンパク質で、TNFαに選択的に結合する能力を持っています。TNFαが生体内で作用を示すためには、免疫細胞上のTNFα受容体というタンパク質への結合し、免疫細胞を活性化させることが必要です。しかし、シンポニーがTNFαに結合すると、TNFαは受容体に結合する能力を失ってしまいます。そのため、シンポニーを投与するとTNFαの生体内での機能が低下し、関節リウマチの症状が抑制されるというわけです。
一方、シンポニーを使用する時には感染症に気をつける必要があります。これは、シンポニーが、TNFαの本来の役割である「外敵からの体の防御」を低下させる可能性があるからです。シンポニーは、TNFαの作用を強力に止めてしまいます。すると、関節リウマチの原因となるTNFαの作用だけでなく、体外からの微生物に対する抵抗力に関わるTNFαの作用をも同時に下げてしまう可能性があるのです。そのため、シンポニーの使用の際には、感染症にかかりやすくなる、感染症の症状が激しくでる、などの項目について注意することが必要です(例えば、結核についての注意が必要とされています)。
シンポニーは皮下注射によって投与されます。これは、シンポニーの成分が、タンパク質であるからです。タンパク質は、消化管で分解されてしまうため、口から投与することはできません。そのため、一般的に生物製剤を口から飲み薬として投与することはありません。シンポニーは皮下注射によって投与します。シンポニーは4週間に一度の投与で十分効果を示すことから、注射による患者さんの負担は小さくなっています。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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