スタデルム(鳥居薬品、主成分 イブプロフェンピコノール)は、様々な皮膚病の炎症と痛みを止めるために用いられる塗り薬です。スタデルムには、軟膏とクリームの二種類が用意されています。スタデルム軟膏に対しては、急性湿疹、接触皮膚炎、アトピー皮膚炎、慢性湿疹、酒さ様皮膚炎、口囲皮膚炎、帯状疱疹の効能が認められています。また、スタデルムクリームの効能としては、これに加え尋常性痤瘡(ニキビ)の効能が認められています。軟膏剤は油を基本としたベトベトとしてタイプの塗り薬です。一方、クリーム剤は水分を基本としたサラサラとしたタイプの塗り薬です。
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スタデルムの主成分であるイブプロフェンピコノールは、風邪薬に含まれるイブプロフェンの構造を改良し、効き目をより強くしたものです。イブプロフェンは、口から飲んで全身の炒めや炎症を抑える作用を示します。一方、スタデルムは皮膚に塗ることで、皮膚の病変部のみに選択的に作用を示します。
皮膚にスタデルムを皮膚に塗ると、薬剤は皮膚の内部へと浸透します。そして、浸透したスタデルムは、皮膚の様々な炎症に関連するシクロオキシゲナーゼ(COX)の働きを阻害します(この作用は、イブプロフェンと共通です)。
COXは、細胞膜のアラキドン酸から、痛みや炎症の元となるプロスタグランジン類を合成する酵素です。スタデルムはCOXの働きを阻害することで、皮膚の中のプロスタグランジン産生を止める作用を示します。プロスタグランジン量が低下するため、炎症反応が抑制され、湿疹、アトピー性皮膚炎などにおける痛みが低下するというわけです。
COX阻害剤は通常飲み薬として用いられますが、胃や腸の表面の粘膜を痛める(出血)副作用が認められます。そのため、COX阻害剤の服用時には、同時に胃薬などが処方されることが多いです。しかし、塗り薬であるスタデルムは、基本的に皮膚でのみ作用を示すことから、胃や腸にたいする副作用を心配する必要はありません。
また、皮膚病における塗り薬としては、副腎皮質ステロイド(いわゆるステロイド外用剤)が頻用されます。ステロイド外用剤では、患部の感染誘発、酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎、皮膚の赤み)などが認められます。しかし、スタデルムでは作用メカニズムが異なることから、これらの副作用は認められません。スタデルムのように、ステロイドではなく消炎鎮痛作用をもつ薬物のことを、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)とよんでいます。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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