セルニルトン(セルニチンポーレンエキス)とはどんな薬?

セルニルトン(東菱薬品工業、主成分 セルニチンポーレンエキス)は、慢性前立腺炎の治療及び初期前立腺肥大症の症状(排尿困難、頻尿、残尿感など)に対し効果を示す薬です。

セルニルトンは、古来からスウェーデンで薬用として使われてきた「花粉」から抽出した8種の植物のエキスを製剤化したものです。これらの植物(チモシイ、トウモロコシ、ライムギ、ヘーゼル、ネコヤナギ、ハコヤナギ、フランスギク、マツ)は、南スウェーデンのスカニヤ地方北西部に由来するものです(東菱薬品工業、インタビューフォームより)。

前立腺は、男性にのみ存在する臓器です。位置的には膀胱の下にあり、膀胱から伸びる尿道(尿を体外に出す管)の周りを取り囲んでいます。前立腺は、精液の材料となる前立腺液を分泌する役割を持ちます。前立腺には精巣から伸びてくる精管が入り込んで尿道と合流します。したがって、前立腺において前立腺液をミックスすることで、精液が出来上がるということになります。

この前立腺の病気としては、前立腺の炎症である前立腺炎と、前立腺が大きくなる前立腺肥大症が挙げられます。これらの病気の特徴としては、排尿のときに起こる様々な症状が挙げられます。

とくに、前立腺は、尿管を取り囲む形で存在しているので、前立腺に炎症が起こったり大きくなったりすると、尿が流れにくくなったり、排尿時に痛みを感じたりします。尿の流れの悪さや排尿時の痛みは、一回の尿の量が少なくさせ、膀胱の中の尿が全て排出できなくなります(残尿感)。すると、必然的にすぐ次の尿意が起こり、トイレの回数が増えます(頻尿)。

残尿感、頻尿という症状は、社会生活を送る上で非常に不快なものです。とくに、夜間に起こる頻尿(夜間頻尿)は、睡眠の妨げになり、生活の質を著しく落とします。


セルニルトンは、動物で発症させた前立腺炎においては、炎症を抑制する作用を示します。たとえば、前立腺液の分泌を増やして、炎症関連細胞の前立腺内への侵入を防ぎます。また、セルニルトンは、動物で発症させた炎症浮腫を抑制する作用も示します。

また、セルニルトンは、動物に発症させた前立腺肥大モデルにおいて、前立腺の大きさを小さくする効果を示しました。また、セルニルトンは膀胱に働きかけて、膀胱の収縮力を高めることで尿を流れやすくする作用を示します。

セルニルトンは、多くの花粉のエキスの混合物であるので、どのエキスのどの成分がこれらの作用をもたらしているのかについて調べるのは非常に難しくなっています。その点では、臨床試験において効果及び安全性を確認することのみで臨床で使用するための承認が得られたことになります。

セルニルトンは、それほど強力な作用を示すものではありません。そのため、前立腺肥大症の初期の治療に用いられます。効果が強くない分、副作用が少ないので使いやすい薬といえるでしょう。セルニルトンは、あくまで症状を緩和する薬であり、前立腺肥大症を根本から治す薬ではありません。前立腺肥大症が進行した場合は、より強力な薬、もしくは手術による治療が必要になることがあります。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。