新しいターゲットを見つけよう

新薬開発の方法は、時代とともに変わって来ています。

20年ほど前までは、「薬を見つけて病気のターゲットも見つけよう」というコンセプトで作られた新薬がほとんどでした。しかし、近年のバイオテクノロジーの発展により、新薬開発の究極の方法「病気の原因であるターゲット分子を見つけて、そのターゲット分子の働きを抑える」という方法が可能になりつつあります。

一昔前は、新薬開発の得意とする製薬会社が薬を見つけてから、その新薬を使って大学の研究者が新薬のターゲット分子の解明をしていました。それが今では、病気の人で増えたり減ったりしている遺伝子(またはタンパク質)を見つけ、これをターゲットとした新薬を作ることが可能になりました。遺伝子を見つける作業自体は簡便な方法で行えるので、大学院の学生が新薬ターゲットをみつけることも(理屈の上では)夢ではありません。

誰がターゲット分子を最初に見つけるか、誰がそのターゲット分子についての特許を最初にとるのか?新薬開発の元となる特許取得には、製薬会社、大学などが激しく入り乱れ、激戦をくり広げています。大学との共同研究で新薬ターゲットを探す試みも、沢山行われています。

しかし、ターゲット重視の新薬開発はリスクが高い(試験管レベルでは効くけど、動物まるごとには効かない可能性がある)とも言われています。これまで、ターゲット重視の方法により、抗がん剤などで新薬開発の成功例が出ています(イレッサ、グリベックなど)。これから、どんな分子をターゲットにした薬がでてくるのか、注目していきたいと思います。