実験の準備をしよう

起案書が通り、新薬開発プロジェクトが始動となるといよいよ実験が動き出します。

まずは、実験材料作りと実験方法の検討から始めます(約半年)。これまで知られていない,まったく新しいメカニズムの新薬を作るときは,材料作りから始めます。まずは,新規メカニズムにかかわる標的タンパク質(酵素や受容体)を作るところから始めます。これまでに知られている類似タンパクの遺伝子の配列などを参考にして,標的タンパク質の遺伝子を入手します(クローニング)。遺伝子が手に入れば,この遺伝子を適当な細胞に入れ(トランスフェクト),目的の標的タンパク質を産生する細胞を選び出せば(ステーブルセルラインの取得),標的タンパクを得ることができます。

材料が手に入れば,つぎは新薬の評価に必要な実験方法を検討します。ここで検討するのは,大量のサンプルをすばやく評価するための実験法の選択です。大量のサンプルをすばやく評価することを「HTS(ハイスループットスクリーニング)」といいます。HTSでは,ロボットによる自動化が行なわれ,1日で1万個以上の化合物を評価しています。材料の種類により,HTSで用いる実験方法が異なるので(名前だけ挙げるとHTRF, Repoter gene assay,SPAなど),どの方法が最適かを検討します。

ここまでの仕事は,遺伝子&HTS専門の部署の人が行います。その間,私たち薬理屋の仕事は,新薬の標的である病気のモデル動物を作成し,この動物を用いて新薬の効き目を調べる実験方法を確立します。実験手技の取得から始める場合も多く,実験条件の検討などであっという間に期間が過ぎることが多いです。

実験材料と動物実験の準備ができると,いよいよ新薬開発の最初の難関,ランダムスクリーニングの開始です。