さて、新薬開発のための実験の準備はできました。いよいよ宝探しの始まりです。
製薬会社は、これまで作って来た自社化合物や、業者から購入した化合物を数百万個持っています(これを化合物ライブラリと呼んでます)。この化合物ライブラリのなかから、新薬の元となる化合物を探し出すことから宝探しは始まります。このように、薬の構造とかにはこだわらず、すべての化合物について化合物の作用を調べるやりかたを「ランダムスクリーニング」と呼んでいます。
ランダムスクリーニングで見つかった化合物が、そのまま新薬になることはほとんどありません。通常は、まず化合物ライブラリの中で活性が高く、扱いやすい化合物を見つけます(これを「ヒット化合物」と呼びます)。次に合成屋さんがヒット化合物に手を加え、より活性が高いリード化合物を作り出します。その後、リード化合物を出発点として、より安全で、取り扱いやすい化合物を作っていきます。
化合物ライブラリの中で、一定以上の作用を示す化合物の割合は、0.5%程度です。そして、これらの化合物から更に絞り込みを行います。化合物のなかに含まれる偽陽性(陽性に見えるが、実際は作用がない)化合物を除くため、同じ実験をもう一度行い、データの再現性を確認します。更に、他の実験によって、他のターゲットに作用しないこと、つまりターゲットに特異的な作用であることを確認します。
この段階で、活性の高い化合物をヒット化合物として選抜します。ヒット化合物を起点に、複数の化合物を合成して、更に詳しいチェックをしていきます。動物に飲ませたときに血液中にきちんと入るか、強い毒性はないか、水に溶けやすいか、などなどいろんな項目があります。すべての項目で優れた化合物というのは、なかなか出ないので、比較的欠点が少ない化合物をリード化合物として選びます。欠点があったとしても、合成屋さんによる合成展開でなくしていくのです。
この間、約1年から2年。ヒット化合物やリード化合物が見つからずに中止になるプロジェクトも少なからずあります。ここで選ぶリード化合物が、このあとのプロジェクト進行に大きく関わってくるので、新薬開発の中の難所の一つといえます。
リード化合物がきまると、いよいよ合成屋さんと薬理屋の共同作業が始まります。その様子は、また次回。
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