偽者を捜せ 再現性と特異性の確認

100万個もスクリーニングをすると、ヒット化合物が数百個になることがあります。この中から宝(薬)の原石となる化合物を見つけないといけません。薬理作用の強さとしては、ほぼ横並び、ドングリの背比べであることが多いです。では、これが全部原石なのか。

実は、薬理作用があるといっても、それが有望な化合物とは必ずしも言えません。ヒット化合物のなかには偽陽性化合物つまり偽物が沢山混ざっているのです。

まず、薬理作用があったというデータ自体が間違いということがあります。100万個の化合物をスクリーニングすれば、1%のミスで1万個の誤った結果が出て来ます。人間が実験しても、ロボットが実験してもこれだけは改善されません。

ただ、この場合、偽陽性化合物を見つけ出すのは簡単です。ヒットした化合物について同じ実験をすればよいのです。すくなくとも2回同じ薬理活性が出たら、データ自体が信用できると考えられます(再現性)。ランダムスクリーニングでは、意外にデータの再現性が得られない場合が多いです。

次に、作用の特異性がない化合物は使えません。作用の特異性というのは、あるターゲットにのみ薬理作用を持つということです。たとえば、タンパク質Aの働きを阻害する化合物を探すとします。このとき、再現性のあるヒット化合物がやはり100個ぐらいは残るでしょう。ここで、全く作用が異なるタンパク質B、およびターゲットになってほしくないタンパクCについて、ヒット化合物がそれぞれのタンパクの作用を阻害するかを調べます。タンパク質Aの作用を阻害し、タンパク質B、タンパク質Cの作用を阻害しない化合物が、真のヒット化合物と考えられ、他の化合物は偽陽性化合物です。

特異性の段階でも結構な数の化合物がふるい落とされ、この段階で真のヒット化合物は10個程度まで絞られます。

あとは、この化合物について、それぞれの持つ長所/短所を探し、数個の化合物を選びます。この選び方についてはまた次回。