新薬開発入門
薬を投与してみよう
ー経口投与ー

薬を体に入れるには?(その2経口投与)

 前回は、静脈内投与(i.v.)について紹介しました。今日は、経口投与(p.o.)
つまり口から薬を飲ませる方法について紹介します。私たちが薬を飲むときは、自分で薬をとり、水と一緒に飲み込みますが、動物はそんなことはしてくれません。餌に混ぜて、餌と一緒に食べさせる混餌投与という方法もありますが、餌に均一に薬を混ぜるのが面倒だったり、薬の投与量をコントロールするのが難しかったりする(餌が均一に混ざり、餌の摂取量がそろう必要がある)ので、長期の実験(3−6ヶ月)以外では余り使われません。というわけで、無理矢理薬を飲ませることになります。

 マウス、ラット、モルモットくらいの大きさの動物では、ゾンデという器具を使って薬物を飲ませます。ゾンデというのは、金属製、もしくはプラスチック製のチューブで、注射器に取り付けられるようになっています。薬は溶液もしくは懸濁液とし、ゾンデを介して注射器で吸い上げます。その後、動物を片手でつかんで(保定するといいます)、口からゾンデを食道にいれ、胃まで押し込んだところで注射器のピストンを押し込み、薬を胃に流し込みます。マンガ「動物のお医者さん」でラットに薬液を投与する場面がありますが、注射器が口の中に入ってません。これでは、確実な投与はできません。ちなみに、アメリカ留学した人の話では、アメリカ某有名大学にはゾンデがなく、スポイトで薬を投与してたということです。その人は、スポイトで投与するめんどくささに絶えかねて、ゾンデを山のようにアメリカに持っていきました。ゾンデを使えば、1分間に2−3匹は投与できます。

 薬の効き目を左右するのは、血液中の薬の濃度です。薬を経口投与した場合、薬はすんなりと血液に入ってくれる訳ではありません。薬が血液に入るためには関門がいくつかあります。まずは、胃や腸の細胞がバリアとなります。化合物によっては、これらの細胞にとり込まれなかったり、これらの細胞内の薬物代謝酵素(薬の構造を変えてしまう酵素)によって不活性化されるなどの理由により吸収されない場合があります。この関門を突破すると、薬は門脈という血管に入り、第二関門の肝臓に向かいます。肝臓は薬物代謝酵素の固まりの臓器であり、ここで不活性化される化合物は沢山あります。

 これら2つの関門により、消化管から血液に入る薬物量が減少することを「初回通過効果(first pass effect)」と呼びます。経口投与による薬剤の効果を高めるには、初回通過効果を抑制する必要があります。そのため、薬作りの早い段階から、消化管細胞や肝細胞を用い、薬物代謝酵素による不活性化を受けないような化合物を探索する必要があります。
 ここまでで、薬を投与する所まで紹介しました。いよいよ薬理試験に突入です。

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