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新薬開発入門
病態モデルって?
ーその1ー

 前回までで、タンパク質もしくは細胞レベルでの薬の薬理作用を確認した後、薬を動物に投与したときの薬物の血中濃度を測定するところまでを紹介しました。薬が吸収されて血液の中に入れば、標的の細胞の元に薬が届くかというと、そう簡単には行きません。例えば、血液脳関門というバリアがあって、これは脳や脊髄に関連する薬について問題になります。脳血液関門については、また次回以降に紹介します。ここでは、血液に入った薬が、きちんと目的の細胞に届くと仮定して話を進めます。

 血液が目的に細胞に届けば、細胞での薬理作用は確認しているので、動物丸ごとでも薬が効くと考えられます。ということで、ここからは生きた動物を使った実験(in vivo試験 インビボ試験、単にビボってよんでます)に入ります。

 薬理作用を評価するためには、動物がヒトの病気(に近い状態)になっている必要があります。このような動物のことを「病態モデル動物」と呼びます。病態モデル動物には1)病気の元になる物質を動物に投与して作る場合と、2)遺伝的に病気に近い状態のなっている動物を使う場合の二通りがあります。今回は1)について取り上げます。

 病態モデルの作り方はいろいろありますが、一番単純なのは病気に関与する物質を体外から投与し、病気の状態にする方法。ここでは高血圧を取り上げます。
「ブロプレス」のようなアンギオテンシンII受容体阻害薬の効き目を評価するには、血圧を上げる作用があるアンギオテンシンIIを動物に静脈内投与します。この時、血圧をモニターすると、血圧は急上昇し一時的に高血圧の状態を示します。これはアンギオテンシンIIが、Aアンギオテンシン受容体と結合して、全身の血管を収縮させたからです。この実験において、アンギオテンシンIIを投与する前にブロプレスを動物に与えておくと、アンギオテンシンIIによる血圧上昇は抑制され、(アンギオテンシンIIによる)高血圧に対する抑制作用があることが推定できます。 

 次に上げるのは、生体内の臓器に障害を起こす物質を投与し、病気の状態にする方法。ここでは、糖尿病を取り上げます。
 たとえば、ストレプトゾトシン(STZ)という物質をラットに静脈内投与すると、膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊されます。インスリンは、血糖値を下げる働きをするホルモンなので、インスリンを作れないSTZを投与したラット(STZラット)の血糖値はどんどん上がっていき、糖尿病の症状を示します。そして、時間が経つと神経障害(感覚が鈍くなる)や、網膜症、白内障、腎障害などの糖尿病合併症を示します。STZラットに神経機能改善薬や、腎機能回復薬(ACE阻害薬など)を投与することで、神経機能、腎機能に対する薬の影響を評価できます。

 あと、ウイルスを直接動物に打ち込む方法もあります。ウイルスが感染する動物種はウイルスにより異なっているんですが、たとえばヒト単純ペルペスウイルス(HSV、帯状疱疹の原因ウイルス)などはマウスに感染することが分かっているので、HSV治療薬の評価は、HSV感染マウスで行うことができます。
 
 以上、人為的に作ることができる病態モデルの例を紹介しました。ほんとは、病気の数だけ病態モデルがあると言ってもいいすぎではありません。これらのモデルので苦労する所は、病態のコントロールをするというところです。病態が進みすぎていても駄目だし(動物の全身状態が悪くなり、薬の効果が見えにくい)、かといって、傷害が弱すぎて病態が生じないというのも困る、という具合です。各会社とも長年のノウハウで、このあたりの匙加減をうまくコントロールしており、職人芸の世界だと思います。
 次回は、神経系についての病態モデルについて触れたいと思います。

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