新薬開発入門
「病態モデルって?」その2
動物は「うつ病」になるか? 前編

うつ病は、感情が何らかの理由で抑制され、社会生活をおくるだけの気力が起こらず、社会的に適応しにくくなる病気です。うつ病患者もしくはうつ病予備軍とされている人は増加の一途をたどっています。そんなわけで、現在では様々な抗うつ薬が開発され、その治療効果が認められています。

 さて、抗うつ薬を開発するには、やはり動物実験が必要になります。そこで問題になるのは、「動物はうつ病になるのか?」つまり病態モデル(うつ病のような症状を示す動物)が存在するのか?ということです。薬の開発に通常用いるラットやマウスなどのげっ歯類は、見ただけでは感情の変化をつかむことはできません(できるのかもしれませんが、ローレンツ(動物行動学者)くらいでないと無理でしょう)。分かることと言えば、動きが激しいときは元気で、動かないときは眠いかしんどい、ということぐらいでしょうか。うつ病を表す病態モデルはなさそうに思えます。

 確かに、動物がうつ病になってるかどうかは(落ち込んでるかどうかは)わかりません。しかし、抗うつ薬に「反応する」ような病態モデルは存在します。反応するというのは、動物の行動に影響を与えるということです。
 
 たとえば、俗に「絶望モデル」とよばれる実験があります。マウスを水槽にたまった水の中に落とします。水槽のなかには、マウスがつかまれるような足場はありません。マウスは泳げるので、足場を求めてひたすら泳ぎますが、足場は決して見つからず、ひたすら泳ぎ続けます。そして、ある一定時間たつと、マウスはパタッと動きを止めます。この行動が、マウスが足場を探すのをあきらめて絶望してるように見えるので、絶望モデルと呼ばれています。

 抗うつ薬は、このパタッと動きを止めるまでの時間を長くします。これを人間流に解釈すると、絶望する(うつ状態になる)間での時間を延長する=うつ状態を治す、ということになります。

 ただし、これはあくまで人間が勝手に解釈した理屈です。もしかしたら、マウスは泳ぐのに疲れて動けないだけかもしれません。抗うつ薬を飲ませると、体力の落ちがカバーされて泳ぐ時間が長くなっているのかもしれません。
 なぜこのモデルが人のうつ病に効くと断言できるんでしょうか?
(以下後編に続く)

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