CYP(cytochrome pigment)とは、生体内にある薬物代謝酵素とよばれるタンパク質です。薬理学上でのCYPの重要な役割は、体内の薬物を不活性化、あるいは排泄しやすい化合物に変換させる(=薬物代謝)というもの。現在までに様々な種類のCYPが見つかっており、各種薬物の代謝に関与することが認められています。
で、CYPがなぜ注目されるかと言うと、下に挙げるような現象があるからです。
催眠薬の一種、barbiral(バルビタール)についての話。「barbiral投与を行うと、生体内のCYPの量が増える」という現象がおこります。このメカニズムですが、barbiralが生体内の何らかのタンパク質と相互作用し(転写因子の活性化)、CYP遺伝子発現のスイッチが入ってCYPがどんどん産生されるのだと考えられます。
この現象が、なぜ注目されるかと言うと、「CYPが増える」→「CYPによる薬物の代謝速度(活性)が上がる」ということになり、この関係から→「barbiralとCYPで代謝される薬物Aを同時に投与すると薬物Aの代謝速度が上がり、作用が減弱する」という現象が予想されるからです。実際、臨床ではこのような作用が確認されており、薬剤相互作用と呼ばれています
上記の例以外にも、CYPの働きを阻害する化合物がCYPで代謝される薬物Bと一緒に投与されても薬物相互作用の原因となります。このときは、CYPが働かなくなるので、CYPで代謝されるべき薬物Bが代謝されず、生体内の濃度が高くなり薬物の作用が出過ぎる、ということになります。
患者さんが多くの薬を同時に服用する可能性は非常に高く、そのなかにbarbiralのような化合物が混ざっていると、薬物の作用がうまく引き出せない(時には有害になる)ことが考えられます。
ということで、最近は新薬を開発するときには、多種類のCYPに対する作用をあらかじめ調べておくことが必須とされています。スクリーニング時に強い薬効を持っていても、CYPに対する作用があるということで採用されない化合物も多くあるんです。
臨床で使われている薬剤でCYP阻害が知られている薬剤を並べてみます。
CYPの基質(代謝される薬物)
CYPの阻害物質
CYPの基質とCYPの阻害物質の組み合わせは、薬物相互作用の可能性があります。
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