バファリン配合錠A330(アスピリン、ダイアルミネート)

バファリン配合錠A(ライオン、エーザイ)は、発熱や痛み(添頭痛、歯痛、月経痛、感冒の解熱、関節リウマチ、リウマチ熱、症候性神経痛など)に効果を示す解熱鎮痛薬です。

主成分は、アセチルサリチル酸(アスピリン)とダイアルミネートです。アセチルサリチル酸は発熱や痛みを和らげ、ダイアルミネートは胃の副作用を軽減します。

バファリン配合錠Aは医療用医薬品なので、処方箋なしで購入できる「バファリン」ブランドの薬(OTC医薬品)とは異なり、入手するには医師が出した処方箋が必要です。

この記事では、バファリン配合錠Aの作用メカニズムについて解説します。

目次

バファリンが痛みを止めるメカニズム

主成分であるアセチルサリチル酸(アスピリン)は、痛みに関連する生体内物質「プロスタグランジン」の量を減らすことで痛みを和らげます。

プロスタグランジンは、痛みを検出する神経(知覚神経)に作用し、痛みへの感度を上げる効果を持ちます。炎症が起こると、炎症部位の細胞がプロスタグランジンを沢山作るので、知覚神経が敏感になり痛みが起こるのです。

プロスタグランジンは、プロスタグランジン合成酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX;cyclooxygenase)」によって作られます。アセチルサリチル酸は、COXの働きを弱めてプロスタグランジン量を減少させることで痛みを和らげます。

プロスタグランジン量を減らす作用を持つ解熱鎮痛剤としては、他にもロキソニン(主成分ロキソプロフェンナトリウム)など、多くの薬があります。

バファリンが胃に優しいメカニズム

バファリンが胃に優しいのは、ダイアルミネートという成分が胃の粘膜を保護するからです。

バファリンの成分であるアセチルサリチル酸は、プロスタグランジン量を低下させます。しかし、プロスタグランジンは、胃粘膜を保護する役割も持っています。

そのため、アセチルサリチル酸を服用すると、胃粘膜の保護作用が弱くなり、胃酸が胃を攻撃することで、胃の出血や胃潰瘍などの副作用が生じることがあります。

そこで、バファリン配合錠Aでは、アセチルサリチル酸による胃のダメージを弱めるために、ダイアルミネート(アルミニウムグリシネートと炭酸マグネシウムの混合物)という物質を添加しています。

ダイアルミネートの作用メカニズムは、以下のとおりです。

  1. 胃酸の攻撃を弱める
  2. ダイアルミネートは、胃酸と中和反応して胃酸の酸性度を下げます。この作用により、胃酸の攻撃力が弱まって胃の障害が起きにくくなります。
  3. アセチルサリチル酸の吸収速度を早める
  4. 胃酸の酸性度が低いと、アセチルサリチル酸の胃からの吸収が早くなります。ダイアルミネートで胃酸の酸性度が下げると、アセチルサリチル酸が速やかに吸収され、胃とアセチルサリチル酸との接触時間が短くなって、胃粘膜への障害が少なくなります。

「バファリンの半分はやさしさでできています」というCMコピーがあります。

この「やさしさ」は、「ダイアルミネートが胃の粘膜を保護する」ことを表しているわけです。

とはいえ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などで消化器粘膜が傷づいているときは、ダイアルミネートがあっても、潰瘍の悪化・出血の可能性があるので、バファリンは服用できません(禁忌)。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


アセチルサリチル酸の構造式