バファリン配合錠A330とは?「半分はやさしさ」の正体と、量で使い道が変わるアスピリン
最終更新:
バファリン配合錠A330(主成分アスピリン、ダイアルミネート)は、頭痛や歯痛、生理痛、発熱などを和らげるために使われていた、医療用の解熱鎮痛薬です。バファリン配合錠A330は2021年に販売を終えました(2026年時点)。
主成分のアスピリン(アセチルサリチル酸)は、100年以上前から使われている、長い歴史がある薬です。この記事では、バファリンのCMでおなじみ「半分はやさしさ」の正体について紹介します。また、アスピリンが量によってまったく別の使い道を持つことと、その理由について、薬を作る側の目線で紹介します。
「半分はやさしさ」の正体
バファリンという名前は、緩衝剤(胃酸の酸性を和らげる成分)を意味する英語の buffer と、主成分の aspirin(アスピリン)の組み合わせが由来です。米国のブリストル・マイヤーズ社が開発し、日本では1963年からライオンが発売しました。
アスピリンは、痛みや熱を引き起こすプロスタグランジンという生体内物質を作る酵素(シクロオキシゲナーゼ、COX)の働きを止めて、痛みや熱を和らげます。一方、プロスタグランジンには、胃の表面に粘液を分泌させるなどして、胃の粘膜を守る役割もあります。そのため、アスピリンを飲むと胃の酸に対する防御力が弱くなり、胃が傷ついたり、潰瘍ができたりすることがあります。
バファリン配合錠A330には、ダイアルミネート(アルミニウムグリシネートと炭酸マグネシウムの混合物)が加えられています。ダイアルミネートは、胃酸を中和して胃への刺激を弱める働きがあります。また、錠剤を速く溶かすことで、アスピリンの吸収を早め、アスピリンが胃にとどまる時間を短くして胃に障害を与えにくくすると考えられています。「バファリンの半分はやさしさでできています」という CM にある「やさしさ」は、この胃を守る工夫のことなのです。
同じアスピリンでも、量で使い道が変わる
アスピリンには、もう一つの顔があります。血小板が集まるのを抑える働きに基づく、抗血小板薬としての姿です。
血液が固まるときには、血小板という小さな細胞が集まり塊を作ります。血小板は COX を持っていて、COX が作る物質(トロンボキサン)が、血小板を集まりやすくして、血液を固まりやすくするのです。
アスピリンは、COX の働きを止めて、COX が二度と働けないようにします(COX にアセチル基をつけて、形を変えてしまうため)。血小板には COX の設計図となる DNA を収めた細胞核がありません。そのため、アスピリンで働けなくなった COX に代わる新しい COX を作り直すことができません。その結果、少ない量のアスピリンでも、その血小板が寿命を終えるまで(約7〜10日)、血小板は集まりにくいままになります。
「血が止まりにくくなる」という痛み止めでは困った副作用となる性質が、服薬量を少なくすることで、血管が詰まって起こる心筋梗塞や脳梗塞を防ぐという、大きな利点に変わるのです。痛み止めのバファリン配合錠A330 に対して、少ない量(81mg)で血を固まりにくくするために用いられるのが、バファリン配合錠A81 です(A81 は2025年に販売中止が発表されました。少ない量のアスピリンの薬は、ほかの製品では今でも使われています)。
服薬量を変えるだけで、100年以上前から知られていた化合物の欠点を素晴らしい利点に変えることができる。私はここに、薬の面白さを感じます。
目立たない「やさしさ」:製剤の工夫
バファリンのやさしさは、胃を守る成分として CM で広く知られました。ただ、どんな薬にも、作る側は何らかのやさしさを込めているものです。ふだんアピールされていないだけで。
たとえば、苦い薬を飲みやすくする工夫(オプソ)、腸から吸収されやすくする工夫(フロモックス)、配合剤にして飲む薬の数を減らす工夫などです。こうした工夫が、使いやすさや飲みやすさというわかりやすい形で多くの人に伝わることが理想ですが、多くのやさしさは縁の下の力持ちで、目に見えにくいものです。
市販の「バファリン」は、中身がいろいろ
市販薬の「バファリン」には、名前は同じでも、含まれる成分が違う製品があります。アスピリンを使った製品のほか、イブプロフェンとアセトアミノフェンを組み合わせた製品(バファリンルナiなど)や、子ども向けのアセトアミノフェンの製品(小児用バファリンチュアブル)もあります。市販品の添付文書にも、「バファリンには有効成分の異なる製品があります」と書かれています(2026年時点)。
よく知られた名前で手に取ってもらいやすくするのは、売る側から見れば良い方法です。一方で、作る側から見ると、名前が同じでも中身が違うことを、どう伝えるかに気を使うところです。
市販のバファリンを選ぶときは、箱の裏の成分表示を必ず確認してください。アスピリンやイブプロフェンで喘息を起こしたことがある人や、子どもに飲ませるときは特に大切です。迷ったら、薬剤師や登録販売者に、成分の名前を伝えて相談してください。

注)アスピリンなどの痛み止めは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍がある人は飲めません。また、痛み止めで喘息を起こしたことがある人(アスピリン喘息)も使えません。15才未満の子どもに使える成分は限られています。薬の使い方は、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。
関連記事:オプソ(苦味を和らげる工夫)/フロモックス(吸収をよくする工夫)/薬の名前の由来
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。