ウリトス/ステーブラ(イミダフェナシン)とは?1つの薬に名前が2つある理由
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ウリトス(杏林製薬)とステーブラ(小野薬品工業)は、どちらも過活動膀胱の治療薬です。名前は違いますが、中身は同じ薬で、主成分(イミダフェナシン)も薬の量も同じです。どちらも、ふつう1日2回、朝食後と夕食後に飲みます。杏林製薬が化合物を見つけ、臨床試験の途中からは小野薬品と共同で開発し、2007年に2社がそれぞれの名前で発売しました。このように、同じ薬を別々の名前で売るやり方を「1物2名称」と呼びます。2020年には、同じ薬のジェネリック医薬品も発売されています。
イミダフェナシンは、膀胱を縮ませるアセチルコリンという物質の働きを抑える薬(抗コリン薬)で、急にトイレに行きたくなる、トイレが近いといった過活動膀胱の症状を軽くします。抗コリン薬には、口が渇きやすいという共通の副作用がありますが、イミダフェナシンは、それが起きにくいように工夫されています。
この記事では、ウリトス/ステーブラの効き方と口が渇きにくい理由、そして1つの薬に名前が2つある理由を、薬を作る側の目線で紹介します。
ウリトス/ステーブラの作用メカニズム
過活動膀胱は、急に強い尿意が起こり(尿意切迫感)、我慢するのが難しくなったり、トイレの回数が増えたり(頻尿)する状態です。年齢とともに増え、夜中に何度も起きて眠れない、外出をためらうなど、生活の質を下げる原因になります。
膀胱に尿がたまると、副交感神経(体を休める状態にする神経)からアセチルコリンが放出されます。アセチルコリンは、膀胱の筋肉の細胞にあるムスカリン受容体のうち M3 受容体に結合し、膀胱を縮ませます。過活動膀胱では、尿が少ししかたまっていないのに膀胱が縮もうとするため、強い尿意が起こります。
イミダフェナシンは、M3 受容体に結合して、アセチルコリンの作用を邪魔します。その結果、膀胱が縮みにくくなり、尿をためられるようになります。
イミダフェナシンには、もう一つの働きがあります。副交感神経の末端には、M1 受容体というもう一つのムスカリン受容体があり、アセチルコリンの放出を強める役目をしています。イミダフェナシンは M1 受容体も止めるので、膀胱に放出されるアセチルコリンそのものも減らします。
このように、イミダフェナシンは、ムスカリン受容体のうち M3 と M1 を強く止め、M2 受容体にはあまり作用しません。M2 受容体は、心臓では拍動をゆっくりにする働きにかかわっているので、M2 受容体の働きを止めると脈が速くなることがあります。

口が渇きにくい理由
抗コリン薬は、過活動膀胱の治療で長く使われてきた薬です。
ただし、アセチルコリンは膀胱だけで働いているわけではありません。唾液を出す、腸を動かす、目のピントを合わせるといった働きにもかかわっています。そのため、抗コリン薬には、口の渇き、便秘、目のかすみといった副作用が共通して起こりやすくなります。中でも多いのが口の渇きです。唾液を出す働きも、主に M3 受容体を通して起こるからです。このように、薬が効く仕組みそのものから起こり、同じ種類の薬に共通して見られる副作用を、クラスエフェクトと呼ぶことがあります。
では、同じ抗コリン薬でありながら、イミダフェナシンはどのようにして口の渇きを起こりにくくしているのでしょうか。カギは、M1 受容体にあります。
イミダフェナシンは、M3 受容体と M1 受容体を強く止めます。膀胱では、M3 受容体を通して筋肉を縮める働きに加えて、神経の M1 受容体を通してアセチルコリンの放出を強める働きがあり、イミダフェナシンはその両方を抑えます。一方、唾液を出す働きは、主に M3 受容体を通して起こります。そのため、膀胱では M1 の分だけ効き目が上乗せされ、唾液腺よりも膀胱に強く効くと考えられています。
実際に、イミダフェナシンは、動物の実験で、唾液を出す働きよりも膀胱に強く作用することが確かめられていました。そして、日本で行われた臨床試験(過活動膀胱の患者さん781人、12週間)では、同じ抗コリン薬のプロピベリン(バップフォー)と比べて、尿漏れを減らす効果は劣らず、口の渇きを含む副作用は少ないという結果が出ました。膀胱と唾液腺とで効き方に差が出る性質を生かして、クラスエフェクトを減らした例と言えます。
クラスエフェクトによる副作用を減らすには、他にもいくつかの方法があります。副作用が出る臓器に薬が届きにくくする(例:脳に入りにくい第二世代の抗ヒスタミン薬)、体全体に効かないように薬の形を工夫する(例:塗り薬にする)、作用が強くなりすぎないようにする(例:パーシャルアゴニスト)などです。
1つの薬に名前が2つある理由
共同で開発し、それぞれの名前で売る
新しい薬を作るには、長い年月と大きな費用がかかります。そこで、ある会社が見つけた薬を、別の会社と共同で開発することがあります。費用や失敗したときの危険を分け合えるうえ、お互いの得意な分野や、医療機関とのつながりを生かせるからです。
共同で開発した薬を売るとき、2社が同じ名前で売る場合と、それぞれが別の名前を付けて売る場合があります。ウリトス/ステーブラは、後者の例です。
イミダフェナシンの場合は、杏林製薬が化合物を見つけ、ヒトで初めて使う第1相試験と、前期の第2相試験までを行いました。その後、小野薬品と共同で開発を進め、後期の第2相試験、プロピベリンと比べた第3相試験、長く飲み続けたときの安全性を調べる試験は、小野薬品が行いました(国が承認の際にまとめた審査報告書より)。
杏林製薬はウリトス、小野薬品はステーブラという名前で、同じ薬を売っています。ちなみに、ウリトスという名前は、頻尿(Urinary frequency)の「URI」と、止める(Stop)の「TOS」を組み合わせたものだそうです(「ウリトス」の名前の由来)。一方、ステーブラは、膀胱(bladder)に留まる(stay)から名付けられました(薬の詳しい説明書であるインタビューフォームより)。頻尿を「止める」と、尿が膀胱に「留まる」。同じ薬でも、2社がそれぞれ違う言葉で薬の働きを表しています。
ほかの1物2名称の例
1物2名称は、ほかにもあります。たとえば、血圧の薬のアムロジピンは、ファイザーがノルバスク、住友ファーマ(旧:大日本住友製薬)がアムロジンという名前で売っています。ぜんそくの薬のモンテルカストは、MSD(旧:萬有製薬)がシングレア、杏林製薬がキプレスという名前で売っています。
3つ目の名前:オーソライズド・ジェネリック
2020年には、杏林製薬のグループ会社(キョーリン リメディオ)から、「イミダフェナシン錠0.1mg『杏林』」という名前のジェネリック医薬品も発売されました。先発品を作った会社の許諾を受けて作られる「オーソライズド・ジェネリック」と呼ばれるもので、中身はウリトス/ステーブラとほぼ同じです。同じ薬に、名前が3つあることになります。
同じ名前のまま2社で売る例
一方、同じ名前のまま2社で売る例もあります。過活動膀胱の薬のベオーバ(ビベグロン)は、杏林製薬とキッセイ薬品工業が共同で開発し、どちらもベオーバという名前で売っています。杏林製薬は、ウリトスでは別の名前を、ベオーバでは同じ名前を選んだことになります。
その後の過活動膀胱の薬
ウリトス/ステーブラの発売後、過活動膀胱には、抗コリン薬とは違う仕組みの薬も加わりました。膀胱の筋肉をゆるめる β3 アドレナリン受容体を働かせる薬で、2011年にベタニス(ミラベグロン)が、2018年にベオーバ(ビベグロン)が発売されました。アセチルコリンの働きを抑えないので、口の渇きなどの抗コリン薬に特有の副作用が起こりにくいのが特徴です。
抗コリン薬は、脳でアセチルコリンが関わる働き(記憶など)にも影響することがあるため、高齢の人や、認知機能が低下している人では、使い方に注意が必要とされています。どの薬を選ぶかは、症状や年齢、ほかの病気などを見て決められます。
注)ウリトス/ステーブラは、尿が出にくい人(尿閉)や、閉塞隅角緑内障の人などには使えません。前立腺肥大症のある男性などでは、尿が出にくくなることがあるため、注意が必要です。目のかすみや眠気が出ることもあります。飲み方や、ほかの薬との飲み合わせが気になるときは、医師や薬剤師に相談してください。
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[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。