マグミット(酸化マグネシウム)とはどんな薬?

マグミット(協和化学工業、主成分酸化マグネシウム)は、胃炎や消化管潰瘍の症状改善、便秘症の治療に用いられる薬です。

マグミットの主成分である酸化マグネシウムは、胃では胃液中の胃酸を中和して、酸による消化管の傷害を低下させます。また、腸から水分を分泌させて便を柔らかくし、便秘の症状を改善します。

目次

マグミットとは

マグミットの主成分である酸化マグネシウムは、「カマ」(酸化の「か」とマグネシウムの「マ」)の略称で知られ、古くから胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状改善や便秘の治療に使われています。

酸化マグネシウムは、胃から腸へ移動する間に、これらの臓器が分泌する胃液や腸液の性質にあったメカニズムによって治療効果を示します。

マグミットが胃潰瘍に効く理由

マグミットは、胃酸の働きを低下させるため、胃酸が原因である消化管潰瘍の症状改善に用いられます。

消化管潰瘍は、ストレスなどで胃酸に対する胃粘膜の防御機能が低下し、胃液が胃の組織を攻撃した結果起こります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍で傷ついた胃粘膜の修復を助けるために、マグミットのような胃液の酸性度を低める薬剤が使われます。

マグミットを服用すると、胃の中で胃酸の成分である塩酸(酸)と酸化マグネシウムが(アルカリ)が中和反応を起こし、塩化マグネシウムと水が生じます。

この反応で塩酸が消費されるので、胃液の酸性度が下がります。すると、胃粘膜に対する胃酸の攻撃能力が低下するので、傷ついた消化管粘膜が回復しやすくなります。


マグミットが便秘に効く理由

便秘は、腸の内容物が動きにくい状態なので、改善するには便が動きやすい環境が必要です。マグミットは、便に水分を加えて柔らかくして腸内を動きやすくします。

マグミットの作用は、胃でできた塩化マグネシウムと重炭酸イオン(腸液の成分)が反応してできる重炭酸マグネシウムという物質によって起こります。

重炭酸マグネシウムは水に溶けにくいので、血液中に吸収されず腸内にとどまります。すると、重炭酸マグネシウムを薄めようとして、腸の細胞から水が滲み出てきます(細胞から水を引き出す原動力を浸透圧と呼びます)。

重炭酸マグネシウムが腸のあちこちにできると、多くの細胞に浸透圧が加わって、たくさんの水分が腸内に出てきます。その結果、マグミットを服用すると、腸の内容物が水を含んで柔らかくなり動きやすくなるので便秘症が改善するのです。


マグミット服用時の注意点

酸化マグネシウムは安全性が高い物質なので、通常の服用量では副作用のリスクは高くありません。しかし、他の薬剤と一緒に服用する場合には注意が必要です。

例えば、抗生物質の中には、マグミットと一緒に服用すると消化管での吸収が悪くなるものがあります。

テトラサイクリン系抗生物質やニューキノロン系抗菌剤は、マグネシウムと反応して水に溶けにくい物質(キレート)を作ります。水に溶けない物質は消化管から吸収されないので、薬剤の効果が減少します。

これ以外にも、一緒に服用すると効果が変化する薬剤がたくさんあります。思わぬ事態を防ぐために、医師や薬剤師に、自分が服用している薬について知らせておくことが大事です。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。