リンデロンDP(ジプロピオン酸ベタメタゾン)とはどんな薬?

リンデロンDP(塩野義製薬、主成分ジプロピオン酸ベタメタゾン)は、外用合成副腎皮質ホルモン剤(外用ステロイド剤)と呼ばれる種類の薬剤です。主成分であるジプロピオン酸ベタメタゾンは、免疫細胞の働きを抑制して非常に強い抗炎症作用を示します。そのため、リンデロンDPの軟膏剤やクリーム剤は、湿疹や皮膚炎をはじめとするさまざまな皮膚病の治療に使用されます。

皮膚病では、さまざまな原因で免疫細胞が活性化し、サイトカインやプロスタグランジン、ロイコトリエンなどの炎症反応を引き起こす物質が分泌されることで、腫れや充血・痛みなどの症状がおこります。

リンデロンDPの軟膏剤やクリーム剤に含まれるジプロピオン酸ベタメタゾンは、これら炎症関連物質の産生を止めて、炎症の拡大を防ぎ、症状を改善します。DPはジプロピオン酸の英語表記である「Dipropionate」の略です。ジプロピオン酸ベタメタゾンは皮膚の表面から吸収され、炎症部位の免疫細胞の細胞内に入り込みます。その後、グルココルチコイド受容体というタンパク質に結合し、受容体と一緒に細胞核(遺伝子が存在する部分)に運ばれます。

ジプロピオン酸ベタメタゾンが結合したグルココルチコイド受容体は、さまざまな種類の遺伝子の働きを調節して、炎症に関わるタンパク質の産生量を変化させます。

一言で言うと、炎症を促進するタンパク質は減り、炎症を抑制するタンパク質は増えるのです。例えば、痛みや腫れプロスタグランジンを合成するための酵素、シクロオキシゲナーゼ(COX2)の量は減少します。また、リポコルチンという、プロスタグランジンやロイコトリエンの材料であるアラキドン酸の生成を抑制するタンパク質の量は増えます。

このように、リンデロンは白血球や免疫細胞が産生する炎症関連タンパク質の量を調節することで、炎症反応を引き起こすプロスタグランジン、ロイコトリエンの量を減らして炎症を改善するのです。

リンデロンは強力な抗炎症作用を示します。有効性の高さの秘密は、ターゲットが遺伝子の調節メカニズムである、ということです。リンデロンは、炎症のもととなるアラキドン酸もCOX2も一気に減らし、炎症の原因を元から絶つのです。単に症状を抑える解熱鎮痛剤とは、根本的に作用メカニズムが違うのです。

これだけ強力なメカニズムを持つため、ステロイド剤には飲み薬として使用した時には、どうしても副作用(糖尿病、骨粗鬆症など)が生じます。これは、免疫以外の生理作用に関与する遺伝子の働きを変えてしまうからです(飲み薬のステロイド剤としては、プレドニン(プレドニゾロン)等が挙げられます)。しかし、リンデロンDPについては塗り薬であり、作用する部位はほぼ皮膚に限定されることから、飲み薬のステロイド剤に見られるような全身性の副作用は出にくくなっています。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。


リンデロンDP(ジプロピオン酸ベタメタゾン)の構造式