サワシリン(アモキシシリン)とはどんな薬?

サワシリン(アステラス製薬、主成分アモキシシリン)は、ペニシリンGの欠点を改良して作られた抗菌剤で、各種の感染症治療に使用される薬です。主成分のアモキシシリンは、ペニシリンGと同じく、細菌を形作る細胞壁の合成を止めることで抗菌作用を示します。また、サワシリンは胃炎や胃がんの原因とされるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌にも使用されます。

サワシリンの主成分であるアモキシシリンは、細菌を形作る細胞壁の材料であるペプチドグリカンの合成を止める作用を持っています。細菌が増殖するには、新しい細胞壁を作る必要があります。アモキシシリンは、ペプチドグリカンを産生するために必要な酵素タンパク質ペニシリン結合タンパク質の働きを止め、細胞壁を作るのに必要なだけのペプチドグリカンを作らせません。その結果、細胞は自分の構造を維持するのに必要な強度の細胞壁を持てなくなり、破裂して死んでしまうのです。

アモキシシリンの抗菌作用のメカニズムはペニシリンG(ベンジルペニシリン)と同じですが、弱点が改善されています。有機合成化学の発達により、ペニシリンの化学構造を変えることができるようになりました。そこで、弱点の原因となる化学構造を別の構造に置き換えることで、ペニシリンGとは異なる特性をもつサワシリンのような薬剤を作ることが可能となったのです。

サワシリンがペニシリンGより優れている点として、飲み薬として服用できる点が挙げられます。ペニシリンGは胃酸により分解されるので、飲み薬として投与することはできず静脈注射で投与されます。一方、アモキシシリンは酸によって分解される化学構造を持たないので、飲み薬として服用できます。

抗菌剤は十分な効果を示すまで服薬し続けなくてはならないので、毎日服用する場合にはサワシリンのような飲み薬が好まれます(逆に大量の抗菌剤を患部に一気に届けるには、血液に薬を直接投与できる注射剤が好まれます)。


また、アモキシシリンは、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に対しても抗菌作用を示します。胃に感染したピロリ菌は、胃炎や胃がんを引き起こす原因となることから、サワシリンとクラリス(クラリスロマイシン)とを用いて除菌されます。

というわけで、サワシリンはペニシリンGよりは使いやすくなったのですが、それでもペニシリンGと同じ欠点が存在します。ペニシリンに対し耐性(薬剤が効かない)を持つ細菌は、サワシリンについても耐性を持つのです。耐性の原因は、ペニシリンやアモキシシリンが持つβラクタム構造という化学構造にあります。耐性菌が持つβラクタマーゼという酵素タンパク質はβラクタム構造を壊して化合物を分解し、薬剤の抗菌作用をなくしてしまうのです。

現在では、βラクタム構造を変化させることで、βラクタマーゼを持つ細菌にも抗菌作用を示す薬剤が開発されています。しかし、それらの新しい薬剤に対しても別のメカニズムによる耐性を示す細菌は存在します。細菌は増殖速度が早く、耐性を引き起こす遺伝子の変異が起きやすいのです。

無制限に抗菌剤を使い続けると、薬剤耐性を持つ細菌だけが生き残って耐性菌が増えやすくなります。風邪など抗生剤が必要ない病気での抗生剤の処方を控え、耐性菌が生じにくくする必要があります。医師だけでなく患者さんも不必要な抗菌剤は求めないと意識することが大事です。


サワシリン(アモキシシリン)の構造式