クラリス(クラリスロマイシン)とはどんな薬?

クラリス(マイランEPD、大正製薬、主成分クラリスロマイシン)は、皮膚や呼吸器に細菌が感染して起こる感染症の治療に用いられる抗生剤です。大きな環状の化学構造をもつことから、マクロライド系抗生物質と呼ばれます。また、胃にヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)がいることが確認された患者さんには、ピロリ菌の除菌を目的として用いられます。主成分のクラリスロマイシンは、細菌のタンパク質合成を止めることで、殺菌効果を示します。

クラリスロマイシンは、細菌のタンパク質合成装置であるリボソームの機能を止める作用を持っています。リポソームの部品である50Sサブユニットと呼ばれるタンパク質と結合し、その働きを低下させることでタンパク質合成を止め細菌を殺します。

リボソームは、タンパク質の設計図であるmRNA(メッセンジャーRNA;DNAに書かれたタンパク質の設計図の写し)に基づきアミノ酸を順々に結合することで、タンパク質を合成します。

リボソームは複雑の機能を持つため、多くのタンパク質が組み合わさってできています。クラリスロマイシンがターゲットとするタンパク質は、その中の50Sサブユニットです。実はこの部品は細菌にはありますが、ヒトの細胞にはありません。したがって、クラリスロマイシンは細菌のタンパク質合成だけを抑制し抗菌作用を示しますが、ヒトの細胞には影響を与えません。

抗生物質の元祖であるペニシリン以来、数多くの抗生物質が発見・使用されてきました。これら抗生物質は、さまざまなメカニズムで細菌の発育を阻止しますが、共有しているのは「細菌の増殖に必要で、ヒトの細胞には存在しないタンパク質」が標的であるという点です。これは、細菌とヒト両方にあるタンパク質の作用を止めると、ヒトの細胞にダメージを与え副作用が起こるためです。クラリスロマイシンも、細菌にしかない50サブユニットの働きを止めることで安全性を担保しているのです。

クラリスロマイシンは、アモキシシリンとともにピロリ菌の除菌にも使われます。また、胃の中の酸性度を低くして抗生物質の効果を高めるために、ランソプラゾールという、胃酸分泌を抑制する薬(プロトンポンプ阻害剤)を併用します。ピロリ菌が胃の中に生息すると、胃炎、胃潰瘍、胃がんの発症のリスクが高まるとされており、検査によりピロリ菌が確認された場合には、これら3つの薬剤による除菌が進められます。これらの薬剤をキット化した製品も販売されており、使用しやすくなっています。

なお、ピロリ菌と病気との関連を発見した研究者は、胃の病気の治療法に大きな進歩を与えたということで、ノーベル賞を受賞しました。受賞者の1人は、ピロリ菌を実際に飲んで(!)胃炎が起こることを証明しています。


クラリス(クラリスロマイシン)の構造式