ベンザリン(ニトラゼパム)とはどんな薬?

ベンザリン(塩野義製薬、主成分ニトラゼパム)は、不眠症やてんかん発作の治療に用いられる薬剤です。主成分であるニトラゼパムは、神経細胞の電気的活動を低下させるタンパク質であるGABAA受容体の働きを高めます。ベンザリンを服用すると、脳の神経活動が低下するので眠気が起こります。また、てんかんの原因となる神経細胞の異常な活性化を止めることで、てんかん発作を起こりにくくします。

脳の活動は、さまざまな種類の神経伝達物質という生体内物質が、神経細胞の活動を高めたり低めたりして脳の多彩な機能を引き出したりコントロールしています。

GABA(γアミノ酪酸)は、神経細胞の電気的活動を低下させる神経伝達物質です。脳における神経機能は、神経細胞の内外をさまざまなイオン(プラスやマイナスの電気を持つ原子や分子)が行き交い、神経細胞が電気的に興奮して起こります。

神経細胞表面にあるGABAA受容体にGABAが結合すると、神経細胞の興奮を抑える役割を持つ塩素イオンが細胞の中に流れ込み、電気的活動のスイッチをオフにします。すると、神経細胞の興奮はおさまり、その結果、さまざまな脳の活動が低下します。

ベンザリンの主成分であるニトラゼパムは、GABAA受容体に結合し、GABAの働きを強めます。その結果、脳の神経機能が低下して、催眠効果やてんかん発作の抑制効果を示します。

例えば、ベンザリンは覚醒度をコントロールする神経機能を弱めるので、服用すると眠気を起こします。この作用は、不眠症に対する睡眠薬としての効能に加え、手術前夜の不眠や麻酔前の不安を改善する(麻酔前投薬)目的でも用いられます。

また、ベンザリンは、神経細胞の異常な活性化が引き金となって起こるてんかんにも使用されます。服用することで、脳の電気的活動が低下し、過度の筋肉の収縮(けいれん)や意識消失などのてんかん発作が起こらなくなります。(GABAやベンゾジアゼピン系化合物の作用メカニズムについては、「セルシン(ジアゼパム)とはどんな薬?」も参照してください)


ベンザリンは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。ニトラゼパムは、ベンゾジアゼピン構造(6角形と7角形の2つの環がつながった構造)という化学構造を持ちます。ニトラゼパムのように、ベンゾジアゼピン構造を持つ化合物をまとめてベンゾジアゼピンと呼びます。

現在、多種多様なベンゾジアゼピンが薬剤として使われています。ベンザリンは、日本で最初に発売されたベンゾジアゼピン系睡眠薬で、1967年の発売から50年以上年経つ現在でも広く使われています。

ベンザリンは、睡眠薬の中でも安全な部類に入る薬剤です。ベンゾジアゼピン系睡眠薬の発売以前に使用されていたバルビツール酸系睡眠薬は、投与量が多くなると死を招く可能性すらありました。バルビツール酸系睡眠薬に比べると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬は安全であり使いやすい薬です。

しかし、睡眠薬であることに変わりはないので、使うときには注意事項を守らないといけません。例えば、ベンザリンを服用した翌朝には、薬の作用が残り、ボーっとしたり、眠気が生じたり、体がだるかったりすることがあります。このようなときは、車の運転や危険な場所での作業は避けることが必要です。

また、ベンザリンはお医者さんの指示を守って飲まなくてはいけません。ベンゾジアゼピン系睡眠薬に共通して言えることですが、勝手に服薬量を増やしたり、飲むタイミングを変えたりすると、薬なしでは眠れなくなる(依存性)ことがあります。逆に、勝手に服薬を止めると、不安感や不眠などの精神症状が起こることがあります。

世の中で安全といわれている薬も、使い方次第では、あっという間に使いにくい薬に変わります。医師や薬剤師の指示に従って、きちんと服用するようにしたいものです。


ベンザリン(ニトラゼパム)の構造式の構造式