テリボン(テリパラチド)とはどんな薬?

テリボン(旭化成ファーマ、主成分 テリパラチド )は、「骨折の危険性が高い骨粗鬆症の治療」に用いられる薬です。骨粗鬆症は、高齢者に非常に多く見られる病気です。骨粗鬆症では、骨の量が少なくなったり、骨の構造が貧弱(スカスカ)になったりすることで、骨の強さが弱くなり、骨折や痛みの原因となります。テリボンの主成分であるテリパラチドは、ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)の一部のアミノ酸配列を取り出して薬にしたものです。

テリパラチドは、骨の量を増やす作用を持っています。しかし、テリパラチドが直接骨に働いて骨の量を増やすわけではありません。テリパラチドは、骨を溶かす働きを持つ破骨細胞の働きを亢進させます。骨には、古い骨を壊し新しい骨を作るサイクル(骨代謝回転)が存在します。テリパラチドは、古い骨を壊す(骨吸収)作用を増やす一方で、新しい骨を作る(骨形成)作用も高めます。この過程では、骨を作る骨芽細胞の働きが高まります。

テリパラチドは、先に述べたように、元々は骨を溶かす働きを持ちます。しかし、テリパラチド自体は速やかに体内から消失するので、そのまま骨が溶ける作用が残ることはありません。いわば、最初に骨吸収のスイッチを入れるところだけを担当し、あとは体が持つ骨代謝回転の仕組みを利用して骨を増やすというわけです。

テリパラチドを用いた骨粗鬆症治療薬は、テリボンの他にフォルテオ(日本イーライリリー)があります。テリボンは、一週間に一回、通院して注射する薬剤であるのに対し、フォルテオは一日一回、自分の手で注射可能な注射薬です。

注射回数の違いは、一回あたりの投与量の違いにあります。テリボンの一回の投与量は56.5μg、フォルテオの一回の投与量は20μg。これは、テリボンは一度に多めのテリパラチドを投与して投与間隔を長くするのに対し、フォルテオは少量のテリパラチドを毎日投与することになります。

テリパラチドは、骨回転のスイッチを入れる役割を持ちますが、テリボンとフォルテオの違いは、強い刺激を時々入れるか、少ない刺激を毎日続けるか、の違いといってもいいでしょう。フォルテオのように毎日刺激を続けるほうが、テリボンのように間を置いて刺激をするよりも骨に対する作用が強く出ると考えられます。もちろん、テリボンについても骨折予防効果などの改善効果は示されており、骨粗鬆症治療薬としての効力は十分有しています。

副作用面から見ると、テリパラチドには、血液中のカルシウムを増やす働きがあります。急激なカルシウム量の変化は、循環器系への作用(血圧の変動、脈拍の変化)などを起こします。テリボンの場合、テリパラチドの一回あたりの投与量が多いことから、これらの副作用が出やすい可能性はあります。

骨粗鬆症治療薬は、高齢者が長い期間にわたって服用する事が多いです。そのため、服用の回数はできるだけ少なくする方が、患者さんにとってメリットがあると考えられています。フォルテオとテリボンの使い分けは効果と使いやすさ(副作用・使い勝手)のバランスを考えて、決定されるべきと考えます。

[この記事を書いた人]

薬作り職人

国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。