スピリーバ(日本ベーリンガーインゲルハイム、主成分チオトロピウム)は、気道が狭くなり呼吸しにくくなる病気である慢性気管支炎、肺気腫、気管支喘息の治療薬です。
スピリーバの主成分であるチオトロピウムは、気道の筋肉(気道平滑筋)を収縮させるアセチルコリンという生体内物質の働きを低下させ、平滑筋を緩めて気道を広げて息苦しさを改善します。
スピリーバは吸入薬で、レスピマットという器具を用いて薬剤を口から吸い込みます。作用が長く持続するため、1日1回の服用で効果を示します。
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気管は口から吸い込んだ空気の通り道です。スピリーバが用いられる慢性気管支炎、肺気腫、気管支喘息(これらの疾患を気道閉塞性疾患と呼びます)では、いずれも気管の筋肉(気管平滑筋)が収縮し、気道が狭くなります。すると、肺に空気が届かず、酸素が体内に十分供給されなくなり息苦しさを感じます。
スピリーバは、気道の筋肉を緩めて気道を広げ、空気の通りを抑制して呼吸しやすくします。
気管の収縮は、副交感神経から放出されるアセチルコリンという生体内物質によって調整されます。アセチルコリンは、気管平滑筋の細胞表面にあるムスカリン状態(M3受容体)に結合し活性化させて、筋肉細胞を収縮させます。
スピリーバの主成分であるチオトロピウムは、M3受容体に強く結合して、アセチルコリンが受容体に結合させなくします。するとアセチルコリンによる気管平滑筋の収縮が弱まって気道が広がります。その結果、スピリーバを服用すると呼吸がしやすくなるのです。
スピリーバは、レスピマットという器具を用い、口から薬剤を吸い込んで服用する吸入剤です。レスピマットのマウスピースを加え、ミスト(霧状)にして噴霧した薬剤を、ゆっくりと吸い込みます。
スピリーバの作用時間は24時間と非常に長く、1日1回(1回で2回吸入)の服用で十分な効果が得られます。これは、チオトロピウムがM3受容体に結合すると、なかなか離れないからです。
普通、受容体に作用する薬は、受容体にくっついたり離れたりを繰り返し、離れた薬剤は他の部位に運ばれたり分解されて効果がなくなります。しかし、チオトロピウムは、受容体から離れる速度が非常に遅く、常に薬剤が受容体に居座っています。そのため、スピリーバは、アセチルコリンの作用を長時間抑制できるのです。
スピリーバを気管支喘息に適用するときは、喘息発作の予防を目的として用いられます(維持療法)。長時間作用が持続するので、特に夜間発作の抑制に適しています。一方、喘息発作が起こったときの治療には適していません。発作の治療には、気道平滑筋を直接弛緩させる薬剤(スピロペント(塩酸クレンブテロール)、メプチン(塩酸プロカテロール)など)が用いられます。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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