カロナール(あゆみ製薬、主成分 アセトアミノフェン)は、かぜの熱ざましや頭痛、腰痛、打棒・捻挫、生理痛、歯痛、関節痛などさまざまな痛みを和らげるために用いられる解熱鎮痛薬です。主成分のアセトアミノフェンは、痛みや体温調節に関わる脳の部位に作用して解熱鎮痛効果を示しますが、詳しい作用メカニズムについてはよくわかっていません。安全性が高く、小児用の解熱鎮痛薬として世界各国で使用されています。
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頭痛、腰痛、打棒・捻挫、生理痛、歯痛、関節痛など、炎症によって起こる発熱や痛みの治療には、大きく分けて2種類の方法があります。一つは炎症部位の痛みや発熱を起こす物質の量を減らす方法、もう一つは痛みや体温を調節する役割を持つ脳の部位に働きかけ、痛みを感じにくくしたり体温を下げる方法です。
カロナールの主成分であるアセトアミノフェンは、2番目の脳に働きかけるタイプの薬剤であり、確かな効果と安全性を持つことが確認されています。
脳には、自分自身の痛みを和らげる仕組みがあります。脳が痛みを感じると、痛みを伝える神経の働きを含め、痛みを感じにくくするのです。この仕組みを下行性抑制系と呼びます。アセトアミノフェンは下行性抑制系の働きを高め、痛みを弱めると考えられています。
また、脳には体温調節中枢という部分があります。体温調節中枢は、体温が一定以上になると、皮膚の血管の血流量を増やしたり汗を出したりして、熱が放出されやすくすることで体温を下げます。アセトアミノフェンは体温調節中枢の働きを高め、汗をたくさん出させることで体温が下がりやすくします。
アセトアミノフェンの詳細な作用メカニズムはまだわかっていません。どのような生体分子に作用するかがわかれば、新しい薬剤の開発につながるかもしれません。
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また、カロナールは、他の解熱鎮痛薬に比べて安全性の高いことが確認されていて、特に子供の病気での熱ざましや痛み止めとして使われます。
大人の解熱鎮痛に用いられる バファリン(アスピリン)やロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム)などの薬剤は、炎症部位の痛みや発熱を起こすプロスタグランジンという物質の量を減らす作用があります。しかし、プロスタグランジンには炎症部位での作用とは別に、胃粘膜を胃酸から守る保護作用があります。そのこで、これらの薬を服用すると胃粘膜の保護作用が弱まり、胃の出血などの副作用が生じます。
アセトアミノフェンは、プロスタグランジンの量を変化させません。そのため、炎症部位の炎症を弱めることなく解熱鎮痛作用を示します。プロスタグランジンの量を変えないということは、カロナールを服用しても胃に対する副作用も少ないということになります。あまりにも大量のアセトアミノフェンを服用すると肝臓の機能に影響が出ますが、医師の処方に従っている範囲では、ほとんど問題ありません。
プロスタグランジンの産生を止めるアスピリンなどの薬剤は、まれに過敏反応により喘息などの症状を起こすことがあります。このような症状を経験した人には、は、作用メカニムが異なるカロナールが使用されます。
[この記事を書いた人]
薬作り職人
国内企業の医薬事業の企画部門に所属。入社後、生物系研究員として、化合物探索、薬理評価、安全性評価に携わりました。企画部門転属後は、研究員時代の経験と専門知識を活かし、各種創薬プログラムの企画運営に携わっています。薬剤師免許保有。
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